(2年の修復を終え、よみがえった木島櫻谷「かりくら」)
明治から昭和にかけて京都画壇で活躍した日本画家木島櫻谷(このしまおうこく)(1877~1938年)が手掛け、約100年ぶりに見つかった大作「かりくら」の修復が完成し、22日、櫻谷の画室があった櫻谷文庫(京都市北区)で関係者に公開された。縦250センチを超える巨大な双幅に仕立てられ、枯れ野を飛ぶように疾走する馬と武者が鮮やかな色彩でよみがえった。
櫻谷は三条室町の商家に生まれ、文展の最高賞を獲得し、動物画の名手として知られた。1910年、第4回文展出品作「かりくら」は翌年、イタリア・ローマの万国博覧会で展示された後、行方が分からなくなっていた。4年前、泉屋博古館(左京区)の調査で、同文庫内で竹ざおに巻かれて見つかった。ひびやしみ、穴のほか、絵の具が剥落。表装もなく劣化が著しいため、住友財団の助成を受け2年がかりで修復した。
武者たちが秋野で馬を駆って狩猟する主題で、画面の対角線を意識し、写実的な馬は目の前に飛び出しそうなほどの迫力。足元の草は速度のある筆で、風さえ感じさせる。同館の実方葉子学芸課長は「淡彩が多かった櫻谷が色彩に目覚め、濃厚な色に変わる時期。代表作につながっていくターニングポイントとなる作品」と話す。
櫻谷のひ孫で同文庫代表理事の門田理さん(66)は「京都の町と文化に育てられた画家。ぜひ多くの人に見てほしい」と話した。「かりくら」は10月28日から同館で始まる「木島櫻谷展」で展示される。