「京都レコード祭り」の会場
音源のダウンロードが主流になった音楽業界で、昭和時代を象徴するレコードが“復権”の兆しを見せている。学生音楽の中心地だった京都でもプレーヤーの売れ行きが好調で、2万点近くの中古レコードが並ぶ恒例の「京都レコード祭り」は、新たなイベントとして注目されるようになった。往年のファンに加え、デジタル世代の若者たちもレコードブームを下支えしている。
スマホや電子端末に音源をダウンロードするスタイルが定着し、CDより古いレコードは激減したようにみえるが、日本レコード協会によると、近年、生産量は増えている。2013年は26万8千枚だったが、14年に40万1千枚、15年には66万2千枚を数える急伸ぶりを見せる。
レコードを聴く上で欠かせないのがレコードプレーヤーだ。京都の家電量販店でも売れ行きは好調で、「ヨドバシカメラマルチメディア京都」(下京区)では今年、プレーヤーの売り場面積を拡張。10機種弱だったラインアップを30機種に増強した。「価格は8千円台から15万円程度までと幅広い。5万円程度の機種が売れ筋」と言う。
レコード人気は中古市場にも波及する。2013年に始まり、今夏で4回目の「京都レコード祭り」は、会場の地下街「ゼスト御池」(中京区)に2日間で2千人が来場。出品する京滋の中古レコード店も年々増えて24店になり、実行委員の加地猛さん(43)は「知名度が上がって京阪神だけでなく、関東から来る人も増えている」と話す。
中でも、シニア層が目立つ。ジャズやロックなど12枚を買った大津市の男性(62)は「年を重ね、さまざまなジャンルの良さが分かってきた。(お金に任せて多くを買う)『大人買い』をしました」と笑顔を見せた。手間も費用もかかるレコード鑑賞だが、時間とお金に余裕のあるリタイアした世代が、懐かしさから手にしているようだ。
最近は、若者の姿も増えつつある。市内のクラブなどでDJとして活動する柳瀬康平さん(26)=中京区=は、ロックやソウルなど約30枚を購入。「約千枚収集しています。レコードの数秒を再生し、自作の動画を作成しています。それをSNS(会員制交流サイト)にアップロードし、収集品を紹介し合う。他人が持っていない作品があると自慢になる」と話す。若者たちはコレクションの対象としてレコードを捉えており、新たな楽しみ方によって裾野は広がりそうだ。