平等院(京都府宇治市宇治)は6日、塔頭の浄土院に伝わる木造聖観音菩薩立像(平安時代後期)について、制作当初は珍しい来迎菩薩(ぼさつ)立像だった可能性が高いことが分かった、と発表した。死者を迎えに行く姿の来迎菩薩としての特徴が、修理の過程で見つかった。
聖観音菩薩立像は高さ109センチで、文化財の指定は受けていない。近世の史料には「関白頼通卿本尊」と記される場合もあり、平等院を創建した藤原頼通との関連をうかがわせる。
2015年から公益財団法人美術院(京都市下京区)で修理と詳細な調査をしたところ、たなびいた着衣の形や、背中に髪がかかっていた痕跡を確認した。前方から風を受ける様子を表しているとみられる。
現在は直立姿勢だが、左足を一歩踏み出している造形から本来は前傾姿勢だったことも分かった。また現状は左手に蓮華(れんげ)を持っているが、脇の角度から、両手を前方に突き出していた可能性があるという。
後世の修理などで形状が変わったとみられ、元は魂を乗せる蓮台を両手に持ち、雲に乗って死者を迎えに行く来迎菩薩だったと推定した。立像の来迎菩薩は制作に高い技術力が必要なため例が少なく、修理を担当した美術院の木下成通技師は「当時の一流の腕を持つ人物が彫ったのでは」とする。
来迎菩薩は、阿弥陀如来と一緒に安置される場合が多い。鳳凰堂の本尊、阿弥陀如来坐像(国宝)の横にあった可能性もあり、平等院の太田亜希学芸員は「鳳凰堂の空間としての意義付けにも影響する。今後も研究を続けたい」と話す。
調査結果を踏まえ、当初の来迎菩薩としての姿を想定した復元図を作成した。一方、これまでに何度も修理が重ねられ、当初の姿を再現するのは難しいことから、仏像自体は聖観音菩薩立像として復元した。
いずれも7日から平等院ミュージアム鳳翔館で始まる特別展で一般公開される。来年1月12日まで。拝観料が必要。