1930年代から集めてきたバレエに関する絵画や資料など、日本バレエ協会前会長の薄井憲二さん(93)=京都市左京区=のコレクションの一端を紹介する特別展「バレエと日本趣味」が、下京区綾小路通高倉東入ルの綾小路ギャラリー武(たけ)で開かれている。19世紀末から20世紀初めにフランスやロシアで上演されたバレエ公演のポスターなど約20点が京都では初めて公開される。
薄井さんは東京生まれで、16歳の時に日本バレエ界の草分けの一人である故東勇作氏に師事。東京帝大在学中に徴兵され、シベリア抑留を経て25歳で帰国、バレエダンサーとして活躍した。また、京都バレエ専門学校などで指導にあたり、モスクワ国際バレエコンクールなどの審査員も歴任、舞踊史の研究や評論も手掛けた。
資料の収集は、バレエに関心を持ち始めた15歳の頃、書店でロシアバレエに関する本を見つけたのがきっかけ。「大学卒の初任給が60~70円の時代に10円という高価な本だったが、どうしても欲しくて手に入れた」と薄井さん。以来、東京・神田の古書店などで外国の雑誌を買い集め、本場のバレエに思いをはせた。
戦後、公演などで海外に行くようになると、現地でも探し歩いた。ダンサー自筆の手紙やメモ、公演プログラムやポスター、絵画など6500点を超えるコレクションは、個人の収集としては世界でも有数の規模とされ、現在は兵庫県立芸術文化センター(兵庫県西宮市)が所蔵。随時公開しているが、京都では披露したことがなかった。
特別展には、「キオト(京都)の近く」が舞台で1890年にパリ・オペラ座で初演された「夢」の公演ポスターや、画家ミュシャが手掛けた衣装デザインの版画、1916年に日本初のバレエ公演を行ったロシア人バレリーナ、エレナ・スミルノワの着物姿のポストカードなどを出展。詩人ジャン・コクトーが伝説のバレリーナ、アンナ・パヴロワやニジンスキーを描いたポスターもある。薄井さんは「どの品にも思い入れがある。バレエを知り、より楽しむきっかけにしてもらえれば」と話す。
12~24日正午~午後7時(最終日は午後5時)。月曜休み。無料。