採用学生と総長
海外での活動に挑戦する学生を応援しようと、京都大は今年度、活動費30万円を支援する「おもろチャレンジ」を実施している。大学を世界や社会に通じた「窓」と位置付け、世界の異なる能力や発想を持つ人々との対話を通して、野性的で賢い学生を育てようという山極寿一学長の「WINDOW構想」の一環で、今回は31人が世界に飛び出していく。(林華代)
「おもろチャレンジ」は、山極学長を支援する経済界の京都大OBグループ「鼎かなえ会」が、学生の挑戦を応援しようと、1000万円を寄付して実現した。応募資格に成績や語学力は関係なく、フィールドワークや調査などで3週間以上海外に滞在し、病気などのリスクに対応することが条件。学部生と院生計115人が応募し、教員らで作る委員会で31人が選ばれた。
学生の挑戦は様々で、渡航先も欧米のほか、アフリカなどの発展途上国が半数以上に上る。
幼い頃からフラダンスを学び、ダンサーになる夢を抱いていた法学部2年河野有妃子さん(19)。将来は企業法務の仕事を目指しているが、おもろチャレンジを知り、しばらく離れていたフラダンスへの思いが再燃。今冬にハワイでフラダンスの文化、宗教的な勉強や技術習得に励む予定だ。河野さんは「英語力や交渉術、対話力も磨き、帰国後はフラの魅力を学生に広める」と目を輝かせる。
植物学者を目指す理学部1年中土井洋平太さん(20)は、マレーシアの熱帯雨林で植生の調査に挑む。高校時代は図鑑を手に、山で植物を探すほどの植物好き。東南アジアの最高峰・キナバル山で、食虫植物「ウツボカズラ」の生態を探る。中土井さんは「お金がなく熱帯での調査を渋っていたが、本当にありがたい機会。感染症など不安もあるが、夢に近づきたい」と話す。
ガーナで孤児の自立支援活動に取り組んでいる農学部2年の横井朱里さん(21)は、アフリカと日本の味覚や嗜好しこうの違いの謎に挑む。
日本では好き嫌いがない横井さんだが、活動で訪れたアフリカでは食事が口に合わず戸惑った。将来、食品メーカーで商品開発を目指しており、今回はエチオピアで市場や食事を調査する。また、現地と日本の食材をミックスした新しいお菓子作りにも挑戦し、現地で試食してもらう。帰国後には成果を発表し、国際協力への関心を高めることにもつなげたいという。
アフリカでのゴリラ研究で英米の研究者と議論し、語学力を鍛えた山極学長は、大学の現状について「院生でも海外の研究者と共同研究する機運が高まらない。京大生は内向きなのでは」と危惧する。それだけに今回の取り組みを「1人で異文化に飛び込み、日本語以外で議論する能力を伸ばすチャンス。独特な経験と対話を基に学んでほしい」と期待している。