素泊まり1泊100万円 仁和寺の新ビジネス
「1泊100万円」の高級宿坊
世界遺産の仁和寺(京都市)が、斬新すぎるビジネスを始めた。なんと「1泊100万円」の高級宿坊を開設したというのである。
日経新聞電子版(7月4日付)の報道によれば、仁和寺が境内にあった「松林庵」という木造2階建ての古い家屋を1億5700万円かけて全面改修し、宿泊事業を始めたという。
宇多天皇が888年に創建した後、明治期まで皇子や皇族が代々住職(門跡)を務めた由緒ある名刹がなぜ“ナマグサ”に思える商売を始めたのか。仏教界に詳しいジャーナリストで現職の浄土宗僧侶でもある鵜飼秀徳氏はいう。
「皇族や公家が住職を務めた門跡寺院は格式が高い反面、財政の柱になる檀家がいません。頼みの綱は拝観料ですが、少子化による修学旅行客減で拝観者数が低迷し、財源は先細っている。仁和寺の場合、文化財の修繕費用を確保するために、国内外で注目されている体験型の宿坊事業に目をつけ、さらに付加価値を加えたのでしょう」
ただ、インターネットで検索しても、1万1000円(1泊2食付き)という従来型の宿坊の情報のみで「1泊100万円」は見当たらない。「松林庵」が境内のどこにあるのかも、公式サイトに記載がないのだ。
仁和寺に問い合わせると、「あえてウェブサイトなどに案内は出していません」(管財課)と断わった上でこう説明した。
「宿泊施設というよりは寝室を含めた『体験の場所』を提供しているものです。文化体験としてお坊さんの法話を聞くのも、御殿で宮廷ゆかりの雅楽やバイオリン演奏に耳を傾けていただいてもいい。
ただ100万円といっても、奏者を呼ぶのに必要な費用などは利用者に別途ご負担していただきます。食事や車は希望があれば、委託している会社を通じて手配できますが、最高級のベッドといったサービスはありません。超高級ホテルのスイートルームとは比較されても困ります」
驚いたことに“素泊まり100万円”だというのだ。
「表には出さず、外国からいらっしゃる富裕層向けの通訳さんなど、口コミを通じて告知しています。といっても、年間100件、200件となると建物の傷みにもつながるので、正直なところ受け入れ人数はコントロールしたい」(同前)
ターゲットは企業の創業者など、「資産に余裕のある方」だというが、すでに利用した人物がいるという。
「5月にいらした“第1号”は、ヨーロッパの有名な経済人でした。名前は明かせませんが、聞けば誰でもご存じの方です」(同前)
値段に見合う価値のある1泊となったのか、ぜひ聞いてみたい。
※週刊ポスト2018年7月20・27日号
「1泊100万円」の高級宿坊
世界遺産の仁和寺(京都市)が、斬新すぎるビジネスを始めた。なんと「1泊100万円」の高級宿坊を開設したというのである。
日経新聞電子版(7月4日付)の報道によれば、仁和寺が境内にあった「松林庵」という木造2階建ての古い家屋を1億5700万円かけて全面改修し、宿泊事業を始めたという。
宇多天皇が888年に創建した後、明治期まで皇子や皇族が代々住職(門跡)を務めた由緒ある名刹がなぜ“ナマグサ”に思える商売を始めたのか。仏教界に詳しいジャーナリストで現職の浄土宗僧侶でもある鵜飼秀徳氏はいう。
「皇族や公家が住職を務めた門跡寺院は格式が高い反面、財政の柱になる檀家がいません。頼みの綱は拝観料ですが、少子化による修学旅行客減で拝観者数が低迷し、財源は先細っている。仁和寺の場合、文化財の修繕費用を確保するために、国内外で注目されている体験型の宿坊事業に目をつけ、さらに付加価値を加えたのでしょう」
ただ、インターネットで検索しても、1万1000円(1泊2食付き)という従来型の宿坊の情報のみで「1泊100万円」は見当たらない。「松林庵」が境内のどこにあるのかも、公式サイトに記載がないのだ。
仁和寺に問い合わせると、「あえてウェブサイトなどに案内は出していません」(管財課)と断わった上でこう説明した。
「宿泊施設というよりは寝室を含めた『体験の場所』を提供しているものです。文化体験としてお坊さんの法話を聞くのも、御殿で宮廷ゆかりの雅楽やバイオリン演奏に耳を傾けていただいてもいい。
ただ100万円といっても、奏者を呼ぶのに必要な費用などは利用者に別途ご負担していただきます。食事や車は希望があれば、委託している会社を通じて手配できますが、最高級のベッドといったサービスはありません。超高級ホテルのスイートルームとは比較されても困ります」
驚いたことに“素泊まり100万円”だというのだ。
「表には出さず、外国からいらっしゃる富裕層向けの通訳さんなど、口コミを通じて告知しています。といっても、年間100件、200件となると建物の傷みにもつながるので、正直なところ受け入れ人数はコントロールしたい」(同前)
ターゲットは企業の創業者など、「資産に余裕のある方」だというが、すでに利用した人物がいるという。
「5月にいらした“第1号”は、ヨーロッパの有名な経済人でした。名前は明かせませんが、聞けば誰でもご存じの方です」(同前)
値段に見合う価値のある1泊となったのか、ぜひ聞いてみたい。
※週刊ポスト2018年7月20・27日号