店頭や店内の椅子を撤去する錦市場の豆乳ドーナツ店
10月の消費増税で導入される軽減税率の対応に、錦市場(京都市中京区)の各店舗が苦慮している。店内飲食は標準税率10%、持ち帰りは軽減税率8%と異なり、多くの外国人客に混乱を招きかねないためだ。税込み価格の統一化やイートイン撤去の動きも出始めており、「京の台所」が複雑な税率に翻弄(ほんろう)されている。
鮮魚店「錦大丸」は10月以降、店内飲食と持ち帰りの価格を同一にする。大隅勇三社長(72)は「イートイン利用客だけ税率を2%上げるのは分かりにくい」と話し、増税分を店舗が負担する。現金精算だけのため、税率を分けると1円単位のおつりの受け渡しで煩雑になるといい、「利益は減るが、仕方ない」とこぼす。
一方、豆乳ドーナツ店「錦市場・こんなもんじゃ」は、軒先に置くイートインの椅子を10月までに撤去し、商品は全て持ち帰りにする。安田圭吾店長(38)は「税率を10%にすると値上げと受け取られる。イートインをなくし、お客さんに還元したい」と話す。
だが、イートインの撤去は、買い物客に自粛を呼び掛けてきた「食べ歩き」を助長しかねない。錦市場では風情を守り、混雑やトラブルを回避するため、食べ歩きの抑制に全店挙げて取り組んできた経緯があり、飲食スペースの設置は有効な対策の一つだった。
反対に、イートイン増設を計画する店舗もある。飲食店「錦もちつき屋」は、看板メニューの餅などを10円単位で値上げした上、イートインと持ち帰りの税込み価格を同一にそろえる。小川秀樹副社長(52)は「年末は買い物客が500人を超え、複数税率の精算ではさばき切れない」と理由を話す。客の8割は外国人といい、売り上げの影響は少ないと判断した。
一方、増税間際になっても方針が定まらない店舗も多い。コロッケなどを扱う店舗は、その一つ。店内のイートインで食べる場合は購入前の申告を求める張り紙を掲げる予定だが、男性店主は「お客さんの様子を見て、その後の対応を考えたい」と思案する。
「軽減税率はあまりにややこしい」。前回の増税時に税率10%を織り込んで価格設定したという飲食店の店主は、不満を隠さない。京都錦市場商店街振興組合の宇津克美理事長(82)は「精算時に持ち帰りかイートイン利用かの意向を確認することが原則と考えている。混乱がないように知恵を絞りたい」と話す。
京都新聞