(台北 16日 中央社)数々の受賞歴を誇り、日本での販売も開始した台湾のクラフトビールブランド「金色三麦」。快進撃の背後には、もともと志していた音楽の道を諦め、台湾の味を世界に届けたいと願った葉冠廷・執行長(最高経営責任者=CEOに相当)の努力があった。
2003年にカナダでの音楽留学を終え、帰台。家族で経営していた龍昇醸造酒場の手伝いを始めた。当時、あまりお酒が好きでなかったという葉さん。ビールを口にするだけで湿疹が出たという。ビールを造るため、プレハブ小屋で夜を明かした時期もあった。2005~2007年、ドイツで醸造技術を学んだ。
酒の醸造を学んでからビールを飲むのが好きになった葉さん。今では一日で最も幸福を感じる瞬間だと語る。だからこそ、台湾人が好きなビールを造りたいと強く願った。その技術と品質は世界と肩を並べられるものだと誇らしげに語る。
金色三麦と同名のビールレストランで提供されるビールを製造する龍昇醸造酒場は、葉さんの取り組みが実り、今や台湾最大の民営醸造所となっている。近年では台湾の食文化を活かしたビールの開発に力を注いでおり、2008年に発売された台湾特産「龍眼蜂蜜」を使ったハニーラガーは同社を代表する商品となった。
台湾のオリジナルビールブランドを立ち上げるにあたり、設備や原料を仕入れるのに、ヨーロッパのメーカーから嫌がらせを受けたこともあったと、葉さんは当初の苦労を振り返る。それでも、海外に出るには自身をアピールすることが大切だと語り、世界で有名になるには、まずアジアからと意欲を見せる。
音楽への未練はないかと尋ねられると、若き日はソウルミュージックやロック、ヒップホップに夢中だったと振り返り、自身の体内には常に音楽があると話す。ビールを口にすると、心の中で自然とその味に合った曲が流れるのだと語った。