稚児(中央)に冷たい抹茶を振る舞う松原中之町の住民
京都市下京区松原通麸屋町西入ルの松原中之町で14日、「古式一里塚松錺(かざ)り」の神事が行われ、八坂神社宮司や祇園祭の長刀鉾の稚児らが参拝し、疫病退散の神に感謝した。
松原通は八坂神社と伏見稲荷大社の氏子地域の境で、通りの以北が八坂神社の氏子地域。1955(昭和30)年まで前祭(さきまつり)の山鉾が巡行した。
松原中之町の町家(ちょういえ)の奥に、素戔嗚尊(すさのおのみこと)を勧請して祭った「頓宮(とんぐう)祇園社」と呼ばれるお社がある。町内は明治初期まで長刀鉾の町内を支援する「寄り町」として鉾と関係があり、町家には、長刀鉾が秘蔵する長刀の拓本が飾られている。
かつて巡行中の長刀鉾はこの前で止まり、稚児が太平の舞を奉納し、町内は薄茶を振る舞った。鉾が松原通を通らなくなっても町内は神事を続け、宮司や稚児らは事前にお参りしている。
午後2時過ぎに神事が始まった。両側にエビが取り付けられた松が立てられたお社の前で、地元の加藤次郎さん(76)が祝詞を上げ、参列者をおはらいした。続いて森壽雄(ひさお)宮司(69)や稚児の林賢人君(10)、禿(かむろ)の桐原真優君(9)と小嶋啓太君(9)らが次々と参拝。町内は古式にのっとって、冷えた抹茶を振る舞った。町内を代表して吉田治弘さん(81)が「長刀鉾の寄り町であることを誇りに思っている。今後もずっと続けたい」とあいさつした。