(台北 18日 中央社)総統府で衛兵が切りつけられた事件で、犯行に使われた凶器の刃物は、1937年12月に始まったとされる「南京事件」で使用された軍刀として国軍歴史文物館(台北市)に展示されていたものだったことが分かった。台北市警察局によると、容疑者の男(51)は犯行直前に同館に向かい、凶器となった軍刀を盗んだとみられている。男は「政治的立場を表明するためだった」と動機を供述しているという。
台北市警察局中正一分局によれば、男は18日午前10時10分に国軍歴史文物館の展示ケースを破壊して軍刀を盗み出し、同15分に総統府の敷地内に侵入。制止しようとした衛兵の右首や左耳、両手などを切りつけた。男はその場で取り押さえられ、近くの派出所に連行された。男の持ち物の中からは中国大陸の五星紅旗が見つかった。
男が犯行に使用した軍刀には「南京の役 殺 一〇七人」の文字が刻まれている。かつて国民党党史館の館長を務めた邵銘煌・政治大学図書情報データ研究所副教授によれば、この刀は1937年末に旧日本軍の向井敏明少尉と野田毅少尉が行った百人斬り競争で使用された軍刀。だが、刀は1938年に制定された九八式であるため、南京攻略戦時にはまだなかったとする指摘もある。
男は警察による取り調べの後、殺人未遂や窃盗、器物損壊、公務執行妨害などの容疑で、身柄を台北地検に送られる。