京都市内の映画館で、かつて「京都ニュース」という数分間の映画が本編前に上映されていた。その原版フィルム450本超が市歴史資料館(上京区)に残っており、保存活用へ関心を持ってもらおうと、12~15日の京都国際映画祭で無料上映される。戦争で父親を亡くした遺児による靖国神社への集団参拝や、「祇園まつり音頭」の発表会など、約60年前のさまざまな京都が鮮明に映っている。
1956~94年の38年間、京都市の委託を受けた京都広報協会が毎月1~2本、35ミリフィルムで撮影。1本の中に五つ前後の話題を収めていた。
例えば56年夏の映画には、宝ケ池での花火大会や五山の送り火などとともに特集「靖国の遺児 東京へ」を収録。戦争遺児の市内の6年生500人が特別列車で京都駅を出発し、靖国神社を参拝、東京観光を楽しむ姿が紹介されている。
57年夏の映画には、島倉千代子さんが歌う「祇園まつり音頭」の発表会が収録され、「姉三六角蛸錦、祇園囃子(ばやし)がコンチキチン」という島倉さんの歌声に合わせて、模範の踊りを輪になって披露する浴衣姿の女性たちが映っていた。
今回は56~57年の17本をDVD化して上映。このほか京都駅周辺の高架工事、叡山ロープウェイ開通など整備が進む交通インフラの話題、高校野球の京都府予選、中村錦之助さんら映画スターの動向などもある。
上映を企画した「おもちゃ映画ミュージアム」(中京区)の太田米男館長(68)によると、資料館にはフィルム保存に適した低温倉庫がなく、このままでは酸化が進んで将来的に上映が難しくなる恐れがあるという。一部は十数年前にデジタル化されたが、まだ未整理で収録内容も不明なフィルムも多く、「戦後の京都を映した貴重な文化資料。保存活用へ機運を高めたい」と話す。
中京区の元立誠小で12、13、15日は午前11時と午後3時からの2回上映。14日は同2時からで太田館長によるトークもある。各回約1時間40分。