JR京都駅南のホテル建設予定地
京都市内で近年、ホテルなど宿泊施設の建設に伴う埋蔵文化財の発掘調査が急増していることが、市文化財保護課の統計で分かった。昨年度から、開発を伴う調査のうち、宿泊施設関連が最多の2割超を占める。外国人観光客の増加を受けた宿泊施設の拡充が、埋蔵文化財調査にも反映している。
市文化財保護課によると、市内では毎年、開発前に遺構の有無などを調べる試掘は120~130件、さらに詳細な発掘調査を必要とするケースは40~50件にのぼる。
調査を伴う開発の目的別でみると、従来はマンションなど集合住宅の建設に伴う調査が最多で、次いで道路や区画整理といった公共事業、私立学校の施設整備が多い傾向だった。
宿泊施設はこれまで単発的で、2014年度は0%(0件)。15年度は8%(4件)で、16年度は23%(11件)と跳ね上がった。本年度(15日現在)は23%(8件)と前年度並み。年明けに2件の開始が決まっており、最終的に上回る可能性があるという。
一方、集合住宅は14年度26%(10件)だったが、本年度は8%(3件)と落ち込んでいる。市文化財保護課は「2020年の東京五輪までに開業を目指すホテルが多い。今後1、2年はこの傾向が続く」とみている。
ホテル予定地の本年度の発掘調査では、平安時代末期の希少なガラス製の書道用具(南区)や、室町時代の商家の石を敷き詰めた地下室(中京区)、鎌倉-室町時代の東洞院大路の路面跡(下京区)などが見つかっている。
相次ぐ発見があるものの、街の景観を心配する現場の声もある。長年、市内で発掘調査するベテラン調査員(68)は「ホテル急増で、観光客が見たいと思う古い町並みを損なっては元も子もない。外観を町家など周囲と調和させるような誘導策も必要ではないか」と話している。
■開発事業に伴う発掘調査
埋蔵文化財があると分かっている場所で建設工事などを行うには、開発事業者は文化財保護法に基づき、自治体の教育委員会などに事前に届け出る必要がある。試掘調査の結果、さらに調査が必要な遺構などが見つかれば、本格的な発掘調査が行われる。