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勝利の神、スポーツ選手に力 ラグビーや駅伝、競馬も

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京都成章高は、関西ラグビー発祥の地の石碑「第一蹴の地」(右端)の隣にある雑太社へ参拝した



サッカー、ラグビー、陸上-。京都にはスポーツにゆかりのある神社が多い。今冬の全国大会に出場したラグビーの京都成章高やサッカーの京都橘高の選手たちも必勝祈願のために参拝した。単なる神頼みではない。選手は練習で積み重ねてきた自信を最後に一押ししてもらおうと、神に祈る。

■「第一蹴の地」
 今冬の全国高校ラグビー大会に出場した京都成章高(京都市西京区)の部員らが昨年12月上旬、左京区の下鴨神社へ必勝祈願のために訪れた。お目当ては糺の森内にある「雑太社(さわたのやしろ)」。関西ラグビー発祥の地「第一蹴の地」の石碑に隣し、11月に新社殿が復興されたばかりだ。

 湯浅泰正監督(53)が保護者から雑太社の話を聞き、「ラグビーに縁がある。勧めもあって参拝することにした」という。チームはベスト8まで進んだ。

 社は糺の森の参道にぽつりと建つ。ラグビーボールを模した楕円(だえん)球形の絵馬には、日本代表選手やラグビーの強豪校の名前が並ぶ。2019年にはラグビーワールドカップ日本大会も開催され、関係者の注目が高まっている。社の復興には関西ラグビー協会の坂田好弘会長(75)の熱意ある働きかけがあった。

 真剣な表情で祈った押川敦治主将(18)は「府大会の決勝の伏見工業・京都工学院高戦でも目に見えない力の後押しを感じた。そういう力も大切にしたい」としつつ「今まで練習してきたことを信じて、持っている力を出し切るだけ」と誓っていた。

 下鴨神社は日本サッカー協会のシンボルマークで知られる「八咫烏(やたがらす)」が祭神で、もともとサッカー関係者の信仰も厚い。神職の東良勝文広報課長(40)は「信仰は人の思いがつくるもの。ここをラグビーの聖地にしたいという思いが広がっているのでは」と歓迎する。

■「勝ちま栗」
 全国高校サッカー選手権大会に出場した京都橘高(京都市伏見区)。初戦で惜敗したが、6年連続で全国の舞台に立ったのは京都の高校サッカー界で初めて。京都大会の連覇が始まった2012年から継続しているのが、学校のそばにある乃木神社での必勝祈願だ。

 大会前の昨年12月22日にも、部員全員で参拝。武運長久の名水という「勝水」が流れる手水場(ちょうずば)で手を清め、ほこらの中にある栗の像をなでた後、静かに手を合わせる。同神社によると、栗は武士が出陣前に食べたという故事や、乃木希典の好物だったことにちなむ。ほこらには「全てに勝ちま栗」と刻まれ、「勝ち運」を招くとされる。

 米沢一成監督(43)は「地元だし、戦いの神様。参拝することでチームに一体感が生まれる」と語った。毎試合前日に参拝するようになってから京都大会での優勝が途切れていない。ゲーム主将の古川隆輝選手(18)は「けがをせず、自分たちのサッカーができるようにと祈願した」とすがすがしい表情だった。

 同神社には、全国大会に19年連続出場している京都橘高のバレーボール部やプロスポーツ選手も参拝に訪れるという。権禰宜(ごんねぎ)の文榮隆徳さん(43)は「心静かにお参りいただくことで、スポーツ選手が気を引き締める場になっていると思う」と説明してくれた。

■G1レース前にぎわう
 5月5日の藤森祭が菖蒲(しょうぶ)の節句発祥の祭りと伝えられる伏見区の藤森神社は、「勝負」つながりで、スポーツの大会前には祈願に来る選手が多いという。

 競馬関係者の参拝が特徴。藤森祭では、戦勝祈願が起源の馬上で曲乗りを披露する「駈馬(かけうま)神事」が行われる。転機は40年ほど前。参拝客から「競馬の必勝祈願はできないか」と尋ねられ、競走馬が描かれた絵馬を授与し始めた。

 京都競馬場でのレース前には、騎手や馬主らの姿が見られるという。GⅠレースの多い秋は競馬ファンでにぎわう。

 馬の安全を祈る馬術関係者の参拝も増えた。藤森信正宮司(53)は「騎手にとって馬は大切な相棒。自分のことのように考えているのだと思う」と話した。

■「神の足」
 長岡京を築いた桓武天皇が神様の足が降り立つ夢を見て、その場にほこらを築いたのが起こりとされるのは、長岡京市の神足神社。

 「神の足」にちなみ、全国女子駅伝の京都チームに毎年、氏子たちがお守りを手渡している。権禰宜の吉野光一さん(70)は「少なくとも20年以上前から続いている」とほほえむ。

 口コミもあり、地域の氏神が注目を集めている。陸上やサッカー関係の参拝者が増え、昨年2月、サッカーJ1のあるクラブの監督らが祈願に訪れた。「たまたまですよ」と吉野さんは謙遜するが、そのクラブは昨季、上位につけた。

 吉野さんは「努力することが大切。最後に神様が手助けしてくれるという気持ちで参拝してもらえたら」と呼び掛ける。


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