2018年がスタートした。今年は平昌冬季五輪・パラリンピックがあり、サッカーワールドカップ(W杯)ロシア大会も開催される。選手自らが祈願することはもちろん、スポーツを見る側も選手を応援してみてはいかが。京都にあるスポーツにかかわる神社をいくつか紹介する。
<武道>八大神社
江戸時代の剣豪、宮本武蔵が吉岡一門と戦う前に立ち寄ったとされ、氏子らが境内に建てた武蔵の銅像が迎えてくれる。
禰宜(ねぎ)の竹内政裕さん(42)は「武蔵は何かにすがりたくて立ち寄ったが、『我れ神仏を尊んで神仏を恃(たの)まず』と悟り、祈りをせずに決闘の場『一乗寺下り松』に向かった」と説明する。
西へ約200メートルの場所にある下り松は5代目。初代の松は神木として境内にまつられている。30年ほど前から、初代の松の小さな破片を添えた「必勝開運」というお守りを授与し、今では「勝守」の名前にしている。武道だけでなくスポーツにかかわる人が参拝する。
毎年1月5日、地元の「京都下り松道場」の小中学生の剣士たちが上達祈願に訪れる。修学院第二小6年の奥田誠也君(12)は「宮本武蔵みたいに強くなりたい。そのためには練習を一生懸命頑張りたい」と誓っていた。
<足腰>護王神社
「足腰の守護神」で知られ、陸上選手をはじめけがの回復を願う参拝者が集まる。奈良、平安期の貴族の和気清麻呂が祭神。清麻呂が道鏡事件で流された際、道中をイノシシが守り、切られた足のけがが治ったという故事にちなむ。
全国高校駅伝が開かれた昨年12月下旬には選手や関係者が訪れた。東京都の大澤由紀子さん(53)は、長男が国学院久我山高の控え選手。足のけがを抱える息子に対し「神様にすがりたくなります」と祈った。14日には全国女子駅伝があり、大勢のランナーが訪れそうだ。
境内の絵馬には陸上関係者以外の願いも。フィギュアスケートの宮原知子選手=関西大、京都市中京区=が奉納した絵馬や羽生結弦選手の活躍を願うファンの絵馬が並ぶ。禰宜の本郷貴弘さん(46)によると、亥年(いどし)だった2007年から御利益を求める参拝者が増えたといい、「ネット上で広まっていることを感じる」と語る。
<競馬・馬術>藤森神社
5月5日の藤森祭が菖蒲(しょうぶ)の節句発祥の祭りと伝えられ、「勝負」つながりで、スポーツの大会前には祈願に来る選手が多いという。
競馬関係者の参拝が特徴。藤森祭では、戦勝祈願が起源の馬上で曲乗りを披露する「駈馬(かけうま)神事」が行われる。転機は40年ほど前。参拝客から「競馬の必勝祈願はできないか」と尋ねられ、競走馬が描かれた絵馬を授与し始めた。
京都競馬場でのレース前には、騎手や馬主らの姿が見られるという。GⅠレースの多い秋は競馬ファンでにぎわう。
馬の安全を祈る馬術関係者の参拝も増えた。藤森信正宮司(53)は「騎手にとって馬は大切な相棒。自分のことのように考えているのだと思う」と話した。
<球技>白峯神宮
「球技の神様」として知られ、サッカーやラグビーW杯の公式球、プロ野球、水球、セパタクローなど幅広い球技のボールが奉納されている。
球技関係者の崇敬を集めるのは、蹴鞠(けまり)とのゆかりが深いから。同神宮は、蹴鞠と和歌の宗家である飛鳥井家の屋敷跡に建っており、同家の守護神「精大明神」を受け継いでまつっている。
球技以外の選手が参拝する姿も。平昌冬季五輪に出場するフィギュアスケートの宮原知子選手が昨夏訪れ、必勝を願ったという。故障からの復活を目指していた時期。権禰宜(ごんねぎ)の北村友湖さん(30)は「練習の成果が発揮できるように祈願されていました」と振り返る。
今夏、サッカーのW杯がロシアで開かれ、日本の勝利を願う参拝者も増えそうだ。北村さんは「競技者が自分を見つめ直す場になっているのでは」と考えている。
<陸上・サッカー>神足神社
長岡京を築いた桓武天皇が神様の足が降り立つ夢を見て、その場にほこらを築いたのが起こりとされる。
「神の足」にちなみ、全国女子駅伝の京都チームに毎年、氏子たちがお守りを手渡している。権禰宜の吉野光一さん(70)は「少なくとも20年以上前から続いている」とほほえむ。
口コミもあり、地域の氏神が注目を集めている。陸上やサッカー関係の参拝者が増え、昨年2月、サッカーJ1のあるクラブの監督らが祈願に訪れた。「たまたまですよ」と吉野さんは謙遜するが、そのクラブは昨季、上位につけた。
吉野さんは「努力することが大切。最後に神様が手助けしてくれるという気持ちで参拝してもらえたら」と呼び掛ける。