台湾の最高裁判所はこのほど、41歳の息子が年老いた母親の世話をしないことは違法として、息子が母親に対して、これまでの養育費や教育費を含めた2230万台湾ドル(約8500万円)を支払うよう命じる判決を下したことが分かった。その根拠となったのは息子が20歳のときに「将来、お母さんの面倒はみます」などと書いた母親宛ての誓約書だった。
最近では子供が親の面倒を見ない例は少なくないが、子供に対して養育費や教育費の返済を命じる判例は台湾では初めて。しかも、たった1枚の手書きの書面を法的に有効と認めるのも極めて異例。
この母親は息子が14歳の時に夫と離婚して以来、兄弟2人を女手ひとつで育て上げており、裁判官が母親を不憫に思ったのは間違いなく、台湾社会で大きな驚きを持って受け止められている。
この兄弟はここ数年、年老いた母親との折り合いが悪くなっており、2人の妻も母親を嫌っていることから、母親に生活費などを渡していなかった。このため、母親が堪りかねて、息子2人を裁判所に訴えたという。
その根拠が兄弟が20歳の時に書いた誓約書で、その内容は「これまでの教育費や養育費を返済するため、母親に収入の60%を支給する」などというものだった。
しかし、兄弟は「社会常識からこのような誓約書の内容はおかしい」などとして裁判で闘うことにしたが、兄の方は裁判の途中で、母親との示談に応じて、500万台湾ドル(約1900万円)を支払うことで合意した。
しかし、41歳で歯科医師の弟の方は納得せず、「親が子供を養い、教育を受けさせるのは当然であり、親が子に見返りを求めないという風習も、社会的に良いものと認められている」などとして、裁判を継続し、最高裁までもつれこんだ。
最高裁の判決について、ネット上では「母親に収入の60%支払うというのは法外だ。誓約書を書いたのが20歳ならば、兄弟は大学生だったはずで、母親に抵抗できなかったのではないか」と兄弟に好意的なコメントもあるが、「誓約書の問題を除いても、母親1人で2人の兄弟を育て上げるのは非常に大変だったと思う。この点を考えれば、兄弟が年老いた母親の世話をするのは当然で、社会的にも美しい習慣だ。とくに、弟の方は歯科医師という社会的にも高いステータスにもかかわらず、社会的な常識が欠如しているのではないか」など兄弟に批判的なコメントも多かった。