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山持たない自伐型林業に脚光 狩猟などと複合で収入

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雪が積もった余呉湖岸で、病気になった桜の木の枝を切る木民のメンバー
(2月1日、長浜市余呉町)



森林荒廃や木造価格の低迷が続く中、山を所有していない地域住民や移住者が山林資源から収入を得る「自伐型林業」が脚光を浴びている。林業の大型化で取り残された中山間地域の森林保全として、小規模林業や狩猟などを組み合わせた生業のスタイルは滋賀県内でも広がりつつある。今夏に自立を目指す長浜市の若者グループが模索を続けている。

 2月初旬、長浜市余呉町は白銀の世界が広がっていた。余呉湖沿いに並ぶソメイヨシノを、作業着姿の男性3人が雪に埋もれながらじっくりと見て回る。不自然に枝が密集した部分を見つけると、長いのこぎりで手際よく切り落とした。

 3人は市が募集した「地域おこし協力隊」の東逸平さん(31)=金沢市出身=、椎名壮司さん(40)=横浜市出身=、谷川友太さん(30)=愛知県扶桑町出身=。旧余呉町で自伐型林業に取り組むため2015年夏に移住してきた。

 余呉湖観光の目玉である桜並木の枝を腐らす病気を防ぐため、公園を管理する地域団体から初めて依頼された仕事だ。「本来は造園業の仕事かもしれない。でも冬は雪が深くて山に入れない。自立するにはこうした副業が欠かせない」と東さんは力を込める。

 自伐型林業は、山林所有者が森林組合や民間会社に大規模な施業を委託する従来型と大きく異なる。少人数が限られた山で小規模の施業を請け負いつつ、まきや山菜の販売、狩猟など山林の豊富な資源を副業につなげる複合型の林業だ。

 山を持たずに参入できるため、過疎化が進む山村地域の雇用や定住にもつながる「地方創生の鍵」として注目されている。

 林業経験がなかった3人の活動の舞台は、余呉町菅並地区から借りた山林だ。市の協力で全国屈指の技術者を講師に招き、資機材の扱い方や作業道の整備、高い樹木を倒さず伐採する特殊伐採、製材技術などを学んできた。

 国から支給される協力隊の活動経費や林野庁の補助金を元手に、総額1千万円超の装備や工具をそろえ、建設機械の運転技能や狩猟免許なども取得した。

 3人は定住に向けて昨年9月、柔軟な経営ができる有限責任事業組合「木民(もくたみ)」を設立した。集落の高齢化で管理の手が入らなくなった森林に自ら作業道を整備し、切り出した木をまきにして収益を得ている。寺社や庭先の樹木伐採、倒木の処理、私有林整備などの仕事も舞い込んでいる。

 夏に協力隊の任期が終われば、国や市から受け取る協力隊の給与がなくなる。その前に山林資源を収入につなげる「長浜スタイル」を確立しようと、個々の技術や得意分野を生かしながら、鳥獣駆除の補助金が出る狩猟や樹液の商品化にも挑戦している。

 業務に見合った適正な価格設定も自立に向けた重要な課題だ。東さんは「現場を見ても、どれくらいの労力がかかるかが分からない。価格を安く設定しすぎたこともあった」と現場経験の必要性を指摘する。

 3人は木民の活動に手応えを感じ始めている。森林組合では受けにくい仕事や、公共事業からこぼれ落ちる仕事もある。会社経営の経験がある椎名さんは「自伐型林業は隙間産業。ニーズはある。林業を志す人を雇用できる受け皿になることができれば」と将来の法人化を目標に掲げる。

 谷川さんは「初めて経験することばかりで面白い。何とかやっていける」と話し、東さんも「中山間地域の暮らしが成り立つことを証明すれば、若い人が入りやすい環境を作ることができる」と意欲を見せる。


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