2018年2月16日、台湾東部・花蓮県の地震をめぐり、台湾と日本、中国の「距離感」が鮮明になった。蔡英文政権は中国からの救援隊派遣の申し出を断る一方、日本の専門家チームは受け入れた。地震後の世論調査では台湾に最も思いを寄せてくれた国で日本が75%超にも上り、最も高かった。
地震発生翌朝の7日午前、中国で台湾政策を担当する国務院台湾事務弁公室は花蓮県の県長に直接電話し、「両岸(中台)の同胞の血は水よりも濃い」と救援隊の派遣を申し出た。中国政府は16年5月の蔡政権発足後も、花蓮など国民党系の8県・市には観光や農産品購入で優遇策を取っている。
これに対し、蔡政権は「海外の援助は必要ない」と謝絶したが、日本からの救援隊は「台湾より高性能な生命探知機があり例外だ」として受け入れを表明、東京消防庁や海上保安庁などの専門家が花蓮を中心にビル倒壊現場で人命探査装置による捜索活動を始めた。
さらに安倍晋三首相は首相官邸のフェイスブックに「台湾加油(頑張れ)」と毛筆で記された色紙の写真を掲載。「この困難な時、私たち日本人は古くからの友人である台湾の皆さんと共にあります」とエールを送った。蔡氏はツイッターに日本語で謝辞を投稿。花蓮の避難所を視察した際には「安倍首相に感謝する」と語り、首相はこの投稿にリツイートし、日台の緊密ぶりをアピールした。
こうした日本の対応に、中国外交部の耿爽報道官は首相官邸が公表した見舞い文のあて先が当初、「蔡英文総統閣下」と肩書・敬称付きで表記されたとして、日本に抗議したことを明らかにした。「総統」の表記は台湾を国家として認めるもので、「台湾は中国の一部だ」とする中国の主張に反するという趣旨だ。
あて先はその後削除され、菅義偉官房長官は13日の記者会見で「広く台湾の方々へのメッセージとして掲載することが適当と判断した」と説明。「申し入れがあったのは事実だ。中国からの抗議を受けてというわけではない」と述べた。
中国共産中央委員会機関紙・人民日報系の環球時報は「大陸を拒絶しながら日本の援助を受けるのか?」と題する記事を掲載。日本の救援隊が「危険な場所には入れない、とたびたび訴えていた」とも報じ、日本の動きをけん制している。
台湾メディアによると、現地の民間調査研究機関は地震後の9~10日に電話で行った世論調査の結果を公表。台湾に最も思いを寄せてくれた国を問う設問では「日本」との回答が75.8%に達し、一番高かった。次は中国だが、わずか1.8%にとどまった。
地元メディアはヤフージャパンが受け付けを始めた募金が1億円を超えたことや東日本大震災で被災し、台湾からの支援を受けた宮城県南三陸町が商店街に募金箱を設置したことなどを相次いで報道。日本で支援の輪が大きく広がっていると伝えている。
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