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ホーム転落防止へ課題山積 視覚障害者のSOS

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近鉄寺田駅に設置された「内方線付き点状ブロック」
線状の突起がホームの内側であることを示す 



視覚障害者が駅のホームから転落する事故が、各地で後を絶たない。京都府内では緊急の集会が開かれるなど当事者は危機感を強めている。誰もが安全に駅を利用できるためには、ホームの整備や声掛けなどハードとソフト両面で対策が不可欠だ。京都・滋賀の現状と課題を探った。


 1月23日、視覚障害者の転落事故を考える集会が城陽市で開かれた。大阪府内で昨年10、12月と死亡事故が続く中、京都府視覚障害者協会(京都市北区)が初めて企画した。「方向を間違え、点字ブロックも踏み越えて落ちてしまった」。全盲の内野正光さん(68)=京田辺市河原=は若い頃、3回線路に落ちた体験を話した。転落1分後に電車が入ってきたこともあり「必死でホームにはい上がった。錯覚や勘違いがある以上、可動式ホーム柵がなければ事故は必ず起きる」。

 他の視覚障害者も次々と口を開いた。車両連結部を乗降口と勘違いしがちなこと。駅の構造が複雑になり場所の把握が難しいこと。両側を線路に挟まれた「島型」のホームが特に怖いこと…。国土交通省によると視覚障害者の転落事故は2016年度に全国で72件起き、過去5年で最多となる3人が亡くなった。京都・滋賀でも昨年、近鉄丹波橋駅や京都市営地下鉄北大路駅で、転落して頭にけがを負うなどした事故が発生。日本盲人会連合(東京)の11年調査(252人回答)では、視覚障害者の4割近くが転落を経験し、転落しかけた人は6割に上る。

 こうした状況に、当事者からホーム柵を求める声が相次ぐ。16年8月、東京メトロで盲導犬を連れた男性が転落し死亡した事故をきっかけに、国交省は鉄道各社などと対策検討会を設置。同年末の中間とりまとめで、1日利用者数が10万人以上の駅で原則、20年度までにホーム柵の設置を求めた。京滋ではJR京都駅が約40万人、京都市営地下鉄京都駅も10万人を超える。

 市営地下鉄は東西線全駅に加え、14~15年に約7億5千万円かけて、京都駅を含む烏丸線3駅で整備。烏丸線ではダイヤの乱れを避けるため、自動で定位置に停車できる装置を搭載した車両に更新後、将来は全駅で設ける方針だ。

 だが多くの鉄道事業者はコスト面のほか、ドアの数や位置の異なる車両が多いなど技術的な難しさにも直面する。JR京都駅ではドアの位置が異なる車両にも対応できる昇降ロープ式ホーム柵の導入を検討する。

 一方、各駅で進むのが「内方(ないほう)線付き点状ブロック」の敷設だ。内方線は点字ブロックに沿う線状の突起で、ホームの内側を示し、方向が分からなくなった時の手掛かりとなる。1万人以上の駅で18年度中、3千人以上の駅でも速やかな設置が求められている。

 阪急や京阪、市営地下鉄では敷設が完了し、JR西日本では京都府内73駅中28駅、滋賀県内は55駅中15駅で設置。近鉄も進め、1月に寺田駅(城陽市)で新設した。近くに住む弱視の小西正子さん(57)は「以前、気付かないうちに点字ブロックより線路側に立っていたこともある」と言い、敷設を歓迎する。

 だが昨年12月に死者が出た阪急上新庄駅(大阪市)では、内方線があっても転落を防げなかった。現場を確かめた田尻彰・府視覚障害者協会長は言う。「ホームが『欄干のない橋』と呼ばれて久しい。事故を風化させず、対策を進めるために、各駅の危険性を洗い出し、周知し、共有していく必要がある」


 ■転落事故に遭遇したら?


 鉄道会社によると、線路に降りて救助しようとするのは、二次被害を招きかねず非常に危険だ。大事なのは、進入してくる電車を一刻も早く止めること。駅のホームには原則、非常ベルが設けられている。押すとサイレンが鳴ったり、近くの運転手に警告が伝えられたり、自動でブレーキがかかったりする。日常的に利用する駅の非常ベルの場所や、ホーム下の待避所の有無を確認しておきたい。


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