21日の記者会見で公開されたデジタル教材や教科書
(屏東 22日 中央社)台湾原住民(先住民)パイワン族の人々が多く居住する南部・屏東県は、県内のモデル校で3年前から、小学1~3年生を対象にした先住民向け教科書の使用を試験的に始めている。成果は上々で、現在では海外からも教育関係者や政府職員が視察に訪れるほどになっているという。
パイワン族は、政府に認定されている16民族のうち、アミ族に次いで人口が多く、屏東県内だけで約6万人いるとされる。このため同県は、先住民の生活に根ざした教育を目指し、パイワン語や国語(中国語)、英語、数学、理科の教科書について独自の研究開発を行ってきた。
教科書は先住民にとって身近な物事やなじみのある文化的要素を多く取り入れた内容で、登場人物もパイワン族。国語では先住民の伝統的な主食であるアワを使った例文を用い、算数ではイノシシやタカを使って数を数えるなど自身の文化に触れながら自然に知識を身に付けられるように工夫が凝らされている。英語では「Let's sing」「Let's run」などの会話で、歌やスポーツに長けた先住民気質を表現した。
教科書づくりに携わるのはパイワン族と、同族出身者を配偶者に持つ外国人からなる編集チーム。英語教材を手掛けた英国人男性は、ロンドン大学に招かれて屏東県の取り組みを伝えたところ、大勢の研究者が興味を示したと話している。
教科書は現在すでに1~4年生対象の教科で編集作業が終わっており、今年はさらに6年生までの国語と算数も完成予定。今後、パイワン族の児童が多い県内の学校に配布される予定だという。