電子化した富士川文庫を通じて、解体新書など古い医学書が手軽に読める(京都市左京区)
平安時代から明治時代に至る日本医学史を渉猟した富士川游(ゆう)(1865~1940)の約9千冊に及ぶ医学書のコレクションを、京都大付属図書館が電子化して公開を始めた。教科書などでおなじみの「解体新書」から戦国大名の家に伝わる医書まで、日本の医学史を総覧する和漢の典籍、西洋医学の翻訳書を読むことができる。
京大貴重資料デジタルアーカイブの「富士川文庫」のコーナーから閲覧できる。18世紀後半に杉田玄白らが訳して出版した解体新書は、頭蓋骨のスケッチの細かな筆遣いまで読み取れる。1703年に上梓(じょうし)された「日用食性和解大全(にちようしょくしょうわげたいぜん)」では、健康のための体操をユーモラスな図柄入りで説明している。戦国大名の今川家に伝わる医書もあり、多彩な角度から古い医学の世界を垣間見られる。ダウンロードでき、無償で複製や加工、ウェブサイトへの掲載もできる。
富士川は広島県生まれで、ドイツに留学して医学を修めた。若い頃から医学史に興味を抱いて史料を収集し、成果は1904年に出版した「日本医学史」として結実した。日本における医史学を確立させた業績として評価されている。京大でも教べんを取った。苦労して収集した史料を役立ててほしいと、17~41年の計3回に分けて京大に寄贈した。保管する同図書館では、電子化する前は館内での閲覧のみ可能だったが、年間数十回と、よく利用されていたという。
同館は「今も昔も変わらない健康への関心の深さを実感できるはず。どんどん活用して」と呼び掛けている。