イワガキが入ったタンクの前で、トスレックの中尾部長(右)と
実験の経過を振り返る生徒たち=京都府宮津市上司・海洋高
電子部品メーカーのトスレック(京都市南区)は25日、極小の泡を使ってカキの内部からノロウイルスを取り除く技術を開発した、と発表した。カキを提供するなど研究に協力した海洋高(京都府宮津市上司)で成果報告会を開き、主産地の広島県の漁業関係者らと共に、ウイルス除去の原理や実用化に向けた取り組みを確認した。
研究は、同社や同高、専門家らでつくる研究グループが昨年4月から始めた。直径1ナノメートル(ナノは10億分の1)の微細な気泡「ウルトラファインバブル」を、均一に発生させる同社独自の装置を活用した。マイナスの電荷を持つ気泡がカキの内部に入り込み、プラスの電荷を持つウイルスに吸着させ、カキの体外に排出させる仕組み。
実験は、ノロウイルスと構造や大きさが近い代替ウイルスを感染させた広島県産のマガキと生徒が育てた岩ガキを使った。マガキでウイルスを99・96%、岩ガキで99・92%取り除くことに成功。いずれも従来の紫外線を使った方法よりも多く除去できた。東北大の高橋計介准教授は「ウイルスをほぼ浄化できる可能性が示された」と話す。
報告会では、校舎内の実験スペースで、同社の中尾順次研究開発部長が研究メンバーや生徒らにウイルス浄化の工程を説明した。広島県漁業協同組合連合会の渡辺雄蔵専務理事は「このシステムでカキの安全性を確保し、消費拡大につなげたい」と期待。同高3年西野海杜さん(17)は「最先端の研究に関わることができ大きな財産になった」と話した。
今後は広島県でカキ生産者らと研究を本格化させ、装置の商品化を目指す。
(京都新聞)