京町家「長江家住宅主屋」北棟
京都市指定有形文化財の京町家「長江家住宅主屋北棟」(同市下京区)で、建設された明治初期ごろの風合いを取り戻す復原工事が行われている。景観的、文化的な価値のある京町家の保存・活用を推進する同市は、京町家の改修や増築について、防火や耐震面で建築基準法の適用を除外する制度を設けており、今回はその第1弾。さらに、工事では立命館大学が記録調査を行い、明治~昭和期の京町家の使われ方や創建当時の姿の解明に挑戦する。
長江家住宅は、長江家が代々呉服の卸を営んできた京町家。慶応4(1868)年に木造2階建て、延べ約125平方メートルの主屋北棟が建築され、その後、明治40年に主屋南棟や離れ座敷などが、大正4年に化粧部屋が、それぞれ建てられた。
主屋北棟は、かつては玄関から中庭へと続く「通り土間」に沿って居室が並ぶ間取りだったが、昭和50年代に床をフローリングにするなどの大規模な改装が行われ、現代的に作り替えられている。これを不動産会社「フージャースホールディングス」が、保存を目的に取得。立命館大と同住宅の保全と活用について連携協定を結んだ。
一方、京町家の増築や用途変更はほかの建築物と同様、建築基準法の規定に適合しなければならず、伝統的なつくりを維持することは難しかった。
同市はこの課題をクリアするため、京町家については、劣化部分の健全化や耐震改修といった地震に対する安全性や、防火改修や住宅用火災警報器の設置など火災に対する安全性を確保したりする基準を満たせば、建築基準法の適用を除外する仕組みを制度設計。今年4月に同基準の運用が開始され、今回の工事が初めての適用となった。
また、復原工事に伴い立命館大は、映像学部が将来の京町家の保存や改修に活用できるように工事の全工程を映像で記録。理工学部は、建物の実測結果や写真などを保存し、工事中にしか確認できない構造の痕跡などから、創建時の姿や明治~昭和期の京町家の使われ方を解明する。
工事は平成30年5月に完了予定。改装後は宿泊体験などの文化行事に活用する。
(産経新聞)