受付業務を行うマネキンの「キャロライン」=左=と4階ロビー窓際に立つ男女のマネキン
平安神宮の鳥居を見下ろす=右上=と「七彩に集った作家たち」展の会場の会場
ん? なんだか変-。京都市左京区の京都国立近代美術館が、いつもと違う気配だ。ロビーに、階段に、窓辺に、館内のあちこちに不思議な「人」たちがいる。ちょっと気取ってすました表情、モデル立ち。暑い夏でもクールなマネキンたちが出没している。
受付で職員の隣に座る女性マネキンは、不動の姿勢で堅実な仕事ぶり。スタッフから「キャロライン」と呼ばれる人気者だ。あまりに自然になじんでいるので、気付かず通り過ぎる人もいるほど。受付背後の2階通路、階段の踊り場にも、数人の影がある。見上げると、驚くようなところに「子ども」が隠れている。
現在同館4階で開催中の「七彩に集った作家たち」展(9月19日まで、有料)に合わせて企画された。1946年、ラバウル戦線から帰国した彫刻家の故向井良吉さんらが京都に設立したマネキン製造会社「七彩工芸(現・七彩)」は、戦後彫刻界をけん引した向井さんのもとに彫刻家、画家、工芸家が集い、芸術的な社風を形成した。同展は、向井さんや故岡本太郎さんらが参加した59年の展覧会「火の芸術の会」の出品作、マネキン彫刻を展示し、戦後京都の美術工芸の動向を紹介している。
その会場から抜け出すように、館内に潜むマネキンは30体。職人たちが一体一体つけまつげなど化粧を施し、メークはばっちり。来館者は二度見して驚いたり、マネキンと記念撮影したり、反応はさまざまだ。企画した中尾優衣研究員によると、ツイッターやネットでも好評という。
4階ロビーの「男女」は、平安神宮の鳥居を見下ろす。京阪神の美術館巡りをしていた広島大の学生財田夕里果さん(19)と渡辺園子さん(20)=いずれも広島県東広島市=は「美術館の外から見るとちょっとホラーだったけど、ここ(4階)からだと、山と空をバックにしてすがすがしい」と笑う。中尾さんは「置かれる場所でマネキンが違って見えるのはなぜか、人体彫刻とマネキンの差は何か、考えながら楽しんでほしい」と話す。展覧会会期中、マネキンを設置する。ロビーなどは無料。