展示で注目が集まる近藤勇の刀2点
(京都市東山区・霊山歴史館)
京都の社寺や博物館が所蔵する刀剣の展示に注目度が高まっている。刀剣を題材にしたゲームの影響もあり、若い女性ファンが増加中だ。平安時代から幕末に至るまで、京都ゆかりの刀の鑑賞ゾーンが観光客を新たに呼び込む場に成長しつつある。
刀剣を展示する京都の各施設によると、刀剣鑑賞に来場者が増えた背景に、刀の名前が付いた“イケメン”のキャラクターを育てるゲーム「刀剣乱舞」のヒットが影響しているという。今春、みやこめっせ(京都市左京区)で催した「京都刀剣まつり」は刀を見に来る女性が目立った。
■近藤、土方そろい踏み
幕末の史料を多数所蔵する霊山歴史館(東山区)では今夏、新選組の局長近藤勇と副長土方歳三の刀を同時に見られると話題になっている。特別展「新選組疾風伝」(開催中~9月11日まで、有料)では、近藤の二振りの刀(個人蔵)を公開しており、来館者は連日100人を超える。
「陸奥大掾三善長道(むつのだいじょうみよしながみち)」は、池田屋事件の恩賞として近藤が松平容保から拝領した。「阿州吉川六郎源祐芳(あしゅうきっかわろくろうみなもとのすけよし)」は、近藤が捕縛された際に土佐の谷干城が没収したとされる。歴史館が常時展示する土方の愛刀「大和守源秀國(やまとのかみみなもとのひでくに)」と一緒に展示されるのは初めての試み。木村幸比古副館長は「最近は単なる刀剣ブームではなく、刀の奥深い歴史的な知識を求め、来場者が増えている」とみている。
神社には、昔から武家が刀を奉納する習わしがある。多くの御神刀を所蔵する北野天満宮(上京区)では、初めて催した「宝刀展」が大盛況だったため、今夏に第2弾を企画した。開催中の「狛犬と宝刀展Ⅱ」(8月末まで、有料)で最も注目を集めるのが、重要文化財「太刀安綱」だ。平安初期の名刀で鬼切丸、髭切(ひげきり)など時代によって呼び名が違う。限定の朱印帳はすぐに売り切れる人気ぶりで、東京都から訪れた大学生北田美紀子さん(20)は「歴史が好きで友達とよく刀を見に行くようになった。刀身の輝きが美しく見ていて癒やされる」と話していた。
■SNSで話題広まる
展示場では、スマートフォンで刀の撮影を許可していることもあって、会員制交流サイト(SNS)で話題がすぐに広まった。同天満宮は「ゲームのキャラに『髭切』がいたので、来場者の8割が女性。刀剣の世界に入るきっかけがゲームでもそこから詳しい知識を得る人が多い。若い人にも御神刀の魅力を知ってもらえれば」と手応えを感じている。
京都国立博物館(東山区)でも今冬に催した刀剣の特集陳列が好評で、若い女性を中心に展示に連日列ができた。今秋には特別展覧会「没後150年 坂本龍馬」(10月15日~11月27日)を予定している。展示は、龍馬が最期に持っていた「陸奥守吉行」と「埋忠明寿(うめただみょうじゅ)」の銘が入った刀、脇差の3本を87年ぶりにそろって公開する。
近年はスキャナーによる科学的調査や目録の控えの発見で、陸奥守吉行と埋忠明寿が本物と分かってきた。重要文化財「坂本龍馬関係資料」へ刀の追加指定の可能性が高まる中で、同博物館は「ファンが多い龍馬だけに、刀剣ブームも相まって多くの来場者が予想されている」と期待している。