防水シートに覆われたシンガポール軍の装甲車=香港
(CNN) シンガポールが台湾での軍事演習に使った装甲車9台を香港で1週間にわたって差し押さえられ、回収しようと腐心している。
シンガポール国防省によると、テレックス装甲兵員輸送車は23日の定期点検の際に、香港税関当局によって差し押さえられた。地元メディアはこの差し押さえについて、中国政府の要請を受けた措置だったと伝えている。
中国外務省報道官は28日、「中国と外交関係のある国が、台湾との間で軍事を含む公式交流を行ったり協力したりすることに反対する。シンガポール政府に対しては、1つの中国の原則の約束を守るよう求める」と語った。
シンガポール国防省によれば、装甲車は「海外での定期的な演習」に使用して、これまでの演習と同様に民間の輸送手段を通じて返送されるはずだった。武器弾薬は搭載していなかったという。
同国国防相は29日、「我が国の海外演習が秘密だったことはない。演習を行う場所も公にされている」と述べ、シンガポールは海峡をはさんだ中国と台湾の関係改善にも貢献してきたと付け加えた。
中国の英字紙グローバル・タイムズは差し押さえられた装甲車について、没収して解体すべきだとする主張を展開。台湾の国防部からは、自軍のものではないとして、コメントはなかった。香港税関は調査中と説明している。
シンガポール国防相は29日に香港の当局者や運輸会社のAPLと会い、装甲車が差し押さえられた理由をはっきりさせたいと話している。
香港・嶺南大学の張泊匯教授は今回の問題の背景について、シンガポールは台湾と長年の防衛協力関係にあり、国土が狭いことからこれまでも台湾で演習を行ってきたと解説する。
「中国がこれについてシンガポールを公に非難したことはこれまでなかったと思う」「真の問題は、シンガポールが米国の疑似同盟国になったと中国が考えていることにあるようだ」と同教授は述べ、「関係が悪化する中で、中国がシンガポールに教訓を思い知らせ、不満の意を伝えるための戦略かもしれない」と推測する。
張教授によると、シンガポールは米国との軍事関係を強化していて、南シナ海の領有権争いでも中国に対して国際仲裁裁判所の判断に従うよう求めていた。