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台湾の政治闘争、日本にも飛び火「売国奴」 中国の影、トランプ氏参戦で複雑に

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台湾の立法院周辺で行われた大規模デモ=2016年12月10日



台湾独立志向の強い民主進歩党(民進党)の蔡英文政権と、対中融和路線の野党・国民党との攻防が激化している。国民党が政権のイメージダウンを狙って混乱を巻き起こせば、蔡政権は国民党の資金源を厳しく追及する。立法院(国会)の外では街頭活動が頻発、中国の影もちらつく。米中外交の主導権奪還を狙うトランプ次期米政権の思惑も絡み、政治闘争は複雑さを増している。

 ◆日本にも飛び火

 「労働基準法改正は改悪だ」「同性婚の合法化は家族の価値観を崩す」。デモに繰り出した人々が立法院周辺で連呼する。デモで道路は封鎖。蔡政権は昨年12月6日に労基法改正の採決を強行したが、国民党は政府が進めるほぼ全ての法案に反対している。

 前月の11月、政府は2011年3月の東京電力福島第1原発事故後に続く日本産食品輸入規制の緩和を立法院に提案したが、これも野党の“標的”となった。「日本人が食べない食品を台湾人に食わせるのか」「日本にこびを売る売国奴」。虚実ない交ぜの過激な主張で不安をあおり、規制緩和措置は遠のいた。

 国民党は昨年1月の総統選で敗北し、同時実施の立法院選でも第1党の座を失った。下野した後、野党時代の民進党が得意とした街頭戦術のまねを始めた。「蔡総統が無能で混乱を招いている」との世論づくりに注力。政権支持率は低下し、戦術はある程度成功しているようにも見える。これに対し、蔡政権は国民党が一党独裁時代に得た不正資産を徹底追及。日本が1945年に台湾を放棄した際、国民党は中華民国が接収した膨大な資産の一部を党資産とした歴史が背景にある。

 蔡政権は昨年11月、国民党直属の投資会社を「不正資産」と認定し接収を発表。総資産額は156億台湾元(約571億円)相当とされ、職員の給与遅配も起きるなど、国民党は党存続の危機に直面した。民進党の元幹部は「やり過ぎの面もあるが、(国民党の)独裁政権下で苦しめられた長年の怨念がある」と話す。

 ◆トランプ氏も参戦

 与野党の攻防が激化する中、国民党は中国に接近。政界事情通は「11月に国民党の洪秀柱主席が訪中した際、中国側と資金支援や人的支援の密約があったようだ」と語る。中台は不可分の領土とする「一つの中国」の原則を堅持する中国は、原則を受け入れない民進党を嫌い、4年後の選挙で国民党復権に期待をつなぐ。総統府筋も「日本食品の危険性を誇張する情報が拡散しているが、多くが大陸発だ」と中国の関与を疑う。

 一方、11月の米大統領選で勝利したトランプ氏は12月2日、外交関係のない台湾の蔡氏と異例の電話会談に踏み切り、世界を仰天させた。その後、「一つの中国」原則に縛られることはないと明言し、中国側は猛反発。今月20日の大統領就任後の対中交渉で主導権を握ろうと、蔡政権に接近する構えを見せつつ、早くも中国への牽制(けんせい)を始めている。(台北 共同)
  



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