東海道の踏破に挑戦しているツアー客
(滋賀県草津市草津1丁目)
総延長約500キロの東海道を踏破する観光ツアーが人気を集めている。数年間かけて歩くプランが主流で、さまざまな旅行会社が企画し、健康志向の高齢者や歴史ファンを引きつける。各地のボランティアガイドや観光施設も協力して、宿場町の魅力発信につなげている。
5月下旬、滋賀県草津市内の東海道。リュックサックを背負い、運動靴で歩く観光客の姿が続いた。大阪や兵庫、広島から訪れた約200人が、旧街道の痕跡をたどった。
神戸市の万代洋子さん(67)は、参勤交代を題材にした時代劇を見て街道に興味を持ったという。この日は瀬田の唐橋(大津市)から草津宿まで歩いた。「草津の本陣はすごく立派。東海道は見どころが多くて楽しみです」とほほえんだ。
企画した旅行コンサルタントの「ディ・ライツ」(大阪市)は2012年から、東海道を完歩するプランを始めた。2年半かけて計50日間歩く日程で、旅行代理店25社と提携して案内している。昨年は延べ6万人が参加、今年は10万人を見込む。60、70代が多く、3分の2は女性という。
同社の永島孝志旅行事業部長(51)は「歴史の物語性に加え、自然景観や名物料理も楽しめる。健康づくりのウオーキング人気に、これらの要素が合わさったことで、年配の旅行者に受けている」とみる。
旅行会社「クラブツーリズム」(東京都)は、23年前から東海道のツアーを続けている先駆け的存在。同社は「ツアーの2年間のうちに何度も同行するので、参加者同士が親しくなって友人ができるのも、この旅の特徴」とPRする。
旅行会社のスタッフに加えて、各地のガイドも活躍している。草津市観光ボランティアガイド協会では、観光会社の依頼が相次いだことで、15年度の総客数は3577人と5年前より6割増えた。同協会の嶋口弥一郎さん(80)は「たくさんの人が来てくれて、草津の歴史を感じてもらえるのがありがたい」と喜ぶ。
草津宿街道交流館が街道を歩く人に贈る「草津宿出立・通過証」も、昨年度は過去最多の468人に発行された。同館の八杉淳館長(57)は「江戸時代の旅人のように、宿場から宿場へと歩くことが、最も歴史を体感できる楽しみ方だろう」と語る。