炎天下に一人で車掌車の塗装を続けた笹田さん
9月の車内公開で展示する世界各地の車掌車の写真。色とりどりの車両が並ぶ
滋賀県甲賀市信楽町柞原の陶器店敷地で「列車うどん」と親しまれ、閉店後は塗装が劣化していた旧国鉄の「車掌車」を、地元の鉄道愛好家の医師笹田昌宏さん(47)=同市水口町=がボランティアで元の黒色の姿に修復した。車内に世界の車掌車100両を写したパネル写真を並べ、9月29日から公開する。国内初の車掌車展として人気を集めそうだ。
笹田さんは鉄道に関する多くの著書があり、鉄道文化財アドバイザーとして全国の車両の保存整備に関わる。
車掌車は1952年製「ヨ3883」を67年に改造した「ヨ13883」。全長約7・8メートル、高さ約3・7メートル、重さ約10トン。引退後は山上陶器に払い下げられ、車内を改装して飲食店を営業していたが、約10年前に閉店し、空き店舗の状態が続いていた。
昨年、列車への喫茶店出店構想があり、水道を整備したが頓挫。話を伝え聞いた笹田さんが貴重な車両の荒廃を心配し、整備を手弁当で買って出た。車内での写真展も発案し、準備を進めている。
展示するのは笹田さんが北米や欧州、東南アジアなど6カ国・地域で撮影した世界の車掌車の写真100点。発着点を示す車票や発煙筒などの関連部品・器具も並べる。公開期間は信楽ゆかりの連続テレビ小説「スカーレット」放映に合わせて9月下旬~来年3月末とし、信楽への来訪者に楽しんでもらう。
山上陶器の上西良英社長(45)は「新たな名物になる。車内公開を通じて飲食店を経営する人が現れてくれれば」と期待。笹田さんは「車輪付き車掌車は県内唯一で、きちんと残したいと思った。車掌車や鉄道の魅力を信楽から発信したい」と話す。
(京都新聞)