AIによって個体識別された野生のチンパンジー
人工知能(AI)を使って野生チンパンジーの顔を識別し行動解析することに成功したと、京都大と英オックスフォード大のグループが発表した。AIによる新たな野外研究の確立につながるという。国際科学誌「サイエンス・アドバンシズ」に5日掲載される。
京大グループは西アフリカ・ギニアのボッソウで1976年から野生チンパンジーの行動を観察。研究者自身が個体を識別して研究につなげてきた。しかし長年にわたって蓄積された膨大なビデオ録画を解析することは難しかった。
高等研究院の松沢哲郎特別教授や霊長類研究所の林美里助教らは、99~2012年のうち計50時間の記録についてAIの深層学習で解析。約1千万枚の画像を分析して、23個体について92・5%の精度で識別することに成功した。さらに個体同士がどれだけ一緒にいる時間が多いかを調べ、雌のチンパンジー2個体について、それぞれが子どもを失って年齢を重ねるにつれ、共に行動する傾向が強くなることが分かった。
松沢特別教授は「何を解析するかという問題設定は人間の研究者が行う必要がある。だがAIを使うことで、顔だけでなく身ぶりや音声などの解析など新しい領域が広がるはず」と話す。
【京都新聞】