観光客が無断で私有地に入るなどのマナー違反が深刻になっている京都の祇園で、30日からスマートフォンに自動でメッセージを送ったり、警備員が見回って外国語で注意を促したりする新たな対策が始まりました。
京都市東山区、祇園の花見小路通の周辺は、石畳の道路沿いにお茶屋や料亭が並ぶ風情ある町並みで、特に外国人観光客の人気を集めていますが、無断で私有地に立ち入ったり、芸舞妓の着物のすそを引っ張ったりするマナー違反が後を絶たず、対策が急務になっています。
国土交通省や京都市などが30日から始めた実証実験では、スマートフォンを持った外国人観光客が祇園エリアに近づくと、アプリを通じてメッセージが届き、許可なく芸舞妓の写真を撮らない、ちょうちんに触らない、建物の外にある竹の囲いに寄りかからないといったマナーを守るよう英語と中国語で呼びかけます。
また、平日の日中には、警備員が英語や中国語が話せるスタッフと一緒に見回りを行い、30日は歩きたばこの観光客や横いっぱいに広がって歩く観光客たちに声をかけては、注意を促していました。
実証実験はおよそ2か月にわたって行われ、京都市観光MICE(マイス)推進室の山下聡課長は、「マナーを守ったうえで、京都を楽しんでもらうため、結果をしっかり検証し、今後の取り組みに生かしていきたい」と話しています。
【祇園マナー啓発実験とは】
祇園の花見小路通周辺のおよそ1キロ以内に近づくと、通知が届くのは、外国人観光客向けのアプリを入れているスマートフォンと、京都市内のおよそ180の宿泊施設で宿泊客に無料で貸し出しているスマートフォンです。
実証実験は、およそ2か月にわたって行われ、協議会が設置した防犯カメラの映像でマナー違反の件数を確認したり、地元の住民と観光客の双方にアンケートを行ったりして効果を検証することにしています。
また、祇園を訪れている観光客のスマートフォンの情報から、観光客の人数や滞在時間、ルートなどのデータも収集するということです。
京都市などは実験結果を分析し、効果が認められるようならば来年度以降、祇園で本格的に対策を実施するとともに、ほかの観光地でも運用できないか検討することにしています。
【マナー違反への対策は】
祇園の飲食店などでつくる協議会が、地元の住民や飲食店にアンケートを行ったところ、「敷地内に勝手に観光客が入ってきた」、「犬矢来(いぬやらい)が壊された」といったマナー違反が報告されました。
協議会は、マナーを守るよう呼びかける立て札を設置するなどの対策を行っていますが、これまでのところ大きな効果は見られず、ことし3月には京都市に対策に乗り出すよう要望書を提出しました。
協議会は、10月下旬から花見小路通周辺の私道では許可なく写真を撮影することを厳密に禁止することを決め、今後、周知を図ることにしています。
祇園町南側地区協議会の太田磯一幹事は、「これまでは、高札を設置するなどして観光客の気持ちに訴えかけていましたが、守ってもらえず、限界があることから、写真撮影を禁止することになりました。祇園は、観光の町ではないということを理解してほしいです」と話していました。