(雲林 1日 中央社)台湾には、寺院に参拝するときや宗教行事で大量の線香を用いたり、紙を燃やす習慣がある。近年、環境意識が高まるにつれ、寺院周辺のPM2.5(微小粒子状物質)濃度が高いことが問題視されるようになった。政府は自粛を呼び掛けており、一部の寺院では香炉を撤去するなど対策に取り組み始めている。しかし一方では、信仰の象徴ともいえる線香の煙が消えることへの懸念や政府への批判が強まった。
批判勢力の一つである北港武徳宮(雲林県)は、政府の統計によれば、大気汚染の原因はバイクや乗用車などが3割以上、これに対し宗教行事で生じる煙は0.3%とその100分の1に過ぎないとして猛反発、台湾各地の寺院や宗教団体に大規模な抗議活動を呼び掛けた。
北港武徳宮によると、7月23日、呼び掛けに応じた台湾各地の寺院や宗教団体が台北市内に集結し、各々手に線香を持って総統府を目指してデモ行進し、政府に伝統文化や風習を重視するよう訴える。現在100以上の団体が参加を表明しており、総勢10万人以上になる見通しだという。
これに対し、行政院(内閣)環境保護署は、線香の自粛は促したものの、禁止してはいないと強調、あくまでも寺院の自主性を重んじる立場を表明し、理解を求めている。
日本人観光客にもよく知られる行天宮(台北市)は、参拝客や職員の健康のためとして2014年に香炉を全面的に撤去。台北最古の寺院とされる龍山寺も2015年から香炉の数を段階的に減らし、現在では1基を残すのみとなっている。