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京都の現代呪術事情

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東山区・安井金比羅宮



京の都では、災害や疫病、権力争いの敗北など、身に降りかかる不幸は「呪い」だと恐れられてきた。菅原道真の怨霊を鎮めるため北野天満宮(上京区)が創建され、貴族たちが呪術を使う陰陽師を重宝したのは有名な話。現代の呪術事情を探った。

 ■丑の刻参りを代行
 まずは「呪術師」に話を聞かないと始まらない。インターネットで検索すると、「呪い代行」の広告が数多く出ている。その一つ、京都市下京区に本部を置く日本呪術協会を訪ねた。

 「依頼に基づき、丑(うし)の刻参りを行います。わら人形にくぎを打ち付ける、あれです」。呪術師範という男性(46)が取材に応じた。協会には全国に35人の神職や僧侶が所属し、自分の寺社で行う。料金は2~5万円とか。

 「20年ほど前は夫の不倫相手を呪う女性の依頼が大半でしたが、今はパワハラ上司を恨む男性が増えています」。現代人は恋愛より職場の人間関係に悩んでいるのか。

 如月純一郎代表(63)は「他人の不幸より自分の幸せを望みましょうと説得し、縁切りや開運を祈るケースが大半。呪うのは、相手に明らかに非がある時だけ」と話す。政治家から対立候補の落選を願う依頼もあるが、今は本人の当選祈願に変えた。その場合、わら人形ではなく、だるまを使うそうだ。

 ■ご利益と言われ迷惑
 複数の代行業者から、呪いに「御利益」があるとされているのが貴船神社(左京区)。高井和大宮司(75)は「大変、迷惑しております」

 同神社は元来、恋愛成就の神。平安時代の歌人和泉式部が恋人の心変わりを嘆き、和歌をささげて復縁を果たしたことで知られ、後拾遺和歌集にも歌が残る。なぜ、逆の信仰が広まったのか。

 平家物語には夫を呪って貴船神社に参り、鬼になった宇治の橋姫の話がある。後に能の人気演目となる謡曲「鉄輪」に発展した。神社に夜参りの風習があったことも影響した、という。今でも年に数件、神木に人形を打ち付けられる被害があり、高井宮司に「数百年前のフィクションが消えない。人を呪えば災いは自分に返ってくる」と警告された。

 ■絵馬に恐ろしい言葉
 最後に「悪縁切り」として全国から参拝者が集う安井金比羅宮(東山区)へ。絵馬には、文字にするのも恐ろしい言葉がつづられていた。鳥居肇宮司(58)は「あまりにひどいものは取り外している。自分の幸せの障壁となる悪い物を断つことを勧めます」
 他人を恨む気持ちは時代に関わらず、無くならないのが人の性(さが)なのか。記者も心当たりがなくもないが、ここはアドバイスに従い、禁煙できない自分の弱さを呪うことにした。


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