納所美代子さん=(手前)左から2人目
(台北 6日 中央社)日本統治時代の旧制高等女学校を起源とする台北市天主教静修女子高級中学(高校)は3日、かつての生徒で、卒業できないまま日本に帰国した納所美代子さん(86)に卒業証書を授与した。同校が開いた歓迎会に家族らの付き添いの下出席した納所さんは、卒業証書を受け取り、長年の夢をかなえた。
同校の陳文珍・人事主任によると、納所さんは1942(昭和17)年、11歳のときに同校の前身である静修高等女学校に入学。だがその後、戦争により帰国を余儀なくされた。卒業できなかったことが、納所さんにとって心残りになっていたという。
事情を知った納所さんの主治医、池永弘二さんは今年9月に学術交流で台湾を訪れた際、同校を訪問。学校側は創立100周年の記念品を池永さんに託した。納所さんは贈り物を受け取ると非常に喜び、母校訪問への思いをのぞかせたという。池永さんの支援の下、納所さんの今回の訪台が実現した。
同校の蔡英華校長は、日本統治時代の生徒で戦後すぐに日本に帰国してしまい、卒業証書などを受け取れないままとなっている人が多くいると話す。70年余りの時を越えてこの縁をつないでくれた池永さんらに感謝を示した。
陳主任によれば、納所さんは同校が大幅な改修を経ているにも関わらず、元の事務室や教室の位置など、校内の隅々まで記憶していた。また、在校生徒たちに対して自身の分まで学業に専念するよう呼び掛けたという。