(建設通信新聞 11・14)
旧奈良監獄を改修し3タイプのホテルなどを整備する
歴史的建造物をホテルにコンバージョンする事業が京都、奈良の両市で複数計画されている。これらを観光資源として位置付け、保存しながらホテルとしても活用する一石二鳥の発想だ。欧米などでは、裁判所や刑務所などの歴史的建造物を保存し、ホテルとして活用している事例が複数ある。旺盛なホテル需要を背景に、日本にもユニークなホテルが誕生しそうだ。
◆日本にも「監獄ホテル」
ユニークな計画の代表格は、法務省によるコンセッション「旧奈良監獄の保存及び活用に係る公共施設等運営事業」(奈良市)だろう。築100年以上が経過した赤れんが造の重要文化財を改修した上で、3タイプのホテルや史料館、商業施設、温泉施設、コミュニティー施設、レストランなどを運営する計画。監獄棟をリノベーションするホテルに加え、世界中の若者をターゲットとした簡易宿泊型のドミトリー(相部屋)も用意する。
事業者は、ソラーレホテルズアンドリゾーツ(東京都港区)を代表企業とする「ソラーレグループ」。構成員は、改修工事などを担う清水建設と日本診断設計(名古屋市)、史料館を運営する東急コミュニティーと小学館集英社プロダクション、代表企業と共同で付帯事業を担当する近畿日本ツーリスト、セイタロウデザイン(品川区)、JAG国際エナジー(千代田区)となっている。建設地は、奈良市般若寺町18の敷地約10.6ha。
◆校舎を保存・活用
ヒューリックは立誠小学校の既存校舎を 活用した複合施設を整備する
ヒューリックを代表とするグループは、「元立誠小学校活用事業」(京都市)を計画している。歴史的価値の高い既存校舎を保存・改修した上で、新築棟を建設して文化事業スペースや商業施設、ホテルなどの複合施設として整備する。グループ構成員は竹中工務店(設計・施工)と古瀬組(施工)で、2020年の完成を目指す。
既存施設としては、1927年に完成した北校舎と講堂、28年の南校舎などがある。既存棟・新築棟を含む開発規模はS一部RC造地下1階地上8階建て延べ約1万5000㎡。ホテルは、ヒューリックが直営する「(仮称)ザ・ゲートホテル立誠京都」で、客室数は約200室の見通し。学校教室の面影を生かした「プレミアムルーム」なども計画している。
新築棟は高瀬川からの景観に配慮し、既存校舎と調和したデザインを採用する。地域のシンボルである既存校舎やグラウンドを活用した施設配置で、1階に文化事業スペースや屋外オープンスペース、商業施設、自治会活動スペースを設ける。建設地は中京区蛸薬師通河原町東入備前島町310-2ほか。
◆NTT都市は初の直営
清水小学校開発プロジェクトのイメージ。昭和初期に建設された既存校舎の外観を生かす
設された既存校舎の外観を生かす
NTT都市開発による「元清水小学校開発プロジェクト」(京都市)では、昭和初期に建設された既存校舎の外観を保存・再生しながら、京都の伝統技術や文化を取り込んだホテルにリノベーションする。教室を客室に改修するほか、講堂・体育館はバンケットに活用する計画だ。19年夏の開業を目指す。
既存建物はRC造4階建て延べ6880㎡で、元清水小学校は、地域住民の寄付で創設した日本初の学区制小学校「番組小学校」の1つ。校舎は1933年の竣工で、瓦屋根やアーチ窓を持つレトロな外観が特徴となっている。
ホテルのコンセプトは「記憶を刻み、未来へつなぐ」で、平均50㎡以上の客室を約50室整備する。同社にとって、開発から経営まで手掛ける初の直営ホテルとなる。運営はプリンスホテルに委託する予定だ。所在地は東山区清水2-204-2ほか。