(茶房スペースを設けた伊藤久右衛門の新店舗)
世界遺産・平等院近くに位置する京都府宇治市の宇治橋通周辺に、茶の卸・小売りや、スイーツなど喫茶を手掛ける茶商の再出店、新規出店が相次いでいる。昨年の老舗「辻利一本店」に続き、15日には「伊藤久右衛門」が新店舗をオープンする。競争の激化が予想される一方、一帯の歴史的な趣やJR宇治駅近くの立地を生かし、茶文化の発信や集客での相乗効果を各茶商は期待している。
宇治橋通はJR宇治駅と平等院を結び、観光客でにぎわう。一帯の約400メートルに、5店が営むことになった。このほか茶農家が抹茶などを直売する1店舗もある。既存の建物はもとより、新設の店舗も古民家を活用したり、昔ながらの格子窓やのれんを取り入れたりして、いずれも一帯の景観を形づくっている。
抹茶スイーツをメインに扱う「伊藤久右衛門」の新店舗は、宇治橋東側の本店、平等院店、京都駅前店に続く国内4店目。14日に内覧会があり、広報担当者は「宇治観光の玄関口であるJR宇治駅前に店を構え、多くの方にゆったり過ごしてもらえる場をつくることが昔からの夢だった」と語った。新築で、既存店を含め最も広い110平方メートルの茶房スペースを設けた。
江戸時代に幕府や大名家の御用達だった宇治茶師、上林春松家の14代目上林春松さん(85)によると、通りの各茶商はもともと卸売が中心だったが、観光ニーズに応えて戦後、小売りも手掛けるようになった。
19世紀半ばの創業から同じ地にある「中村藤吉本店」は、2001年に茶房スペースを開設。茶文化に親しむ入り口を広げるため、抹茶アイスやゼリーの商品化にいち早く取り組んできた。6代目の中村藤吉社長(65)は「昔と同じ空間、景色の中で茶の歴史的背景を感じてもらうことを大切にしている」と話す。
辻利一本店は昨年、25年ぶりに幕末の創業地近くに再出店した。5代目の辻俊宏社長(55)は「宇治橋通には宇治茶の中心地というイメージがある。有名店が集まれば、全体的な盛り上げになるのでは」と期待する。