(台北 25日 中央社)日本統治時代に建てられた台北市の市定古跡「陳天来故居(旧宅)」(大同区)が、管理の不十分から荒れ放題になっている。現状を懸念した同市文化局は23日、専門家や保存を求める子孫らとともに現場の調査を行った。
陳天来は1891年に「錦記茶行」(茶葉の貿易会社)を起こし、日本統治時代には南洋市場の開拓に成功して巨万の富を築いた。劇場や高級レストランなどに手広く投資を行ったり、慈善事業に熱心だったことなどでも知られる。
陳天来故居は、1920年代に造られたバロック様式の建物で、1階が商売用、2階が招待所、3階が自宅として使われた。
2006年、保存を希望する子孫が市に古跡の認定申請を提出して認められたものの、所有権を持つ親族が30人以上おり、全員の足並みがそろわなかったことから、古跡保存に必要な管理は長期間行われてこなかった。現在、内部の水漏れや外壁の破損など、劣化が目立っているが、意見の異なる一部親族が明け渡しを拒んでいる。
調査に同行した子孫の2人は中央社の記者に、「一族の大部分はしかるべき修繕を行って一般開放し、陳家の歴史を伝えたいと思っている」と述べ、居住を続ける親族の立ち退きを望んでいる。
調査に当たった台北市政府文化局の田イ副局長は、建物は陳家の私有財産で、当局は親族間の問題に立ち入ることはできないとしながらも、古跡としての公共性は「私有」で済ませることはできないと強調。文化資産保存法に基づいて3カ月以内の改善を求めるとともに、問題の早期解決を希望した。(イ=王へんに韋)