(屏東 29日 中央社)日本統治時代に建設された南部・屏東県のたばこ工場「屏東エン葉廠」(屏東市)が、博物館・文化発信拠点として生まれ変わろうとしている。30日には、全24棟ある鉄筋コンクリート造りの建物のうち、すでに修復を終えた「中山堂」が初公開され、博物館の慣例にとらわれない自由な展示やイベントを通じ、多民族の文化が融合する地元の魅力をアピールする。(エン=くさかんむりに於)
同工場は、1936(昭和11)年に建てられた「台湾総督府屏東支局葉煙草再乾燥場」を前身とする。戦後には香蕉(バナナ)、珍珠(パール)、楽園(パラダイス)などの銘柄の紙巻きたばこや刻みたばこが生産された。しかし、世界貿易機関(WTO)加盟に伴う専売制の廃止や喫煙人口の減少により、2002年に閉鎖。内部には大量の機械・器具が残され、地元のたばこ産業の歴史を物語る資料となっている。
屏東県は2010年、かつて事務所だった中山堂を含む4棟を県の歴史建築に指定。また今年、広大な敷地に残るその他20棟の建物についても歴史建築群として保留し、一括して再整備する方針を固め、中央政府に4億7000万台湾元(約17億8400万円)の予算を申請している。
今後は、たばこ工場の輪郭を残しつつ、ビン南系、客家系、戦後に移民してきた中国大陸出身者などの漢民族や原住民(先住民)らがともに暮らす地元の特色を生かし、民族の違いにとらわれないクリエイティブな博物館・文化発信拠点として整備する予定だという。(ビン=門がまえに虫)
中山堂の初公開に当たっては、「南風博物」と銘打った一連のイベントが企画されている。「家」をテーマに、地元に住む各民族の家屋を紹介する展示やウイークエンドマーケット、ガイドツアー、映画上映会などで屏東の多様な文化を感じ取ることができる。開催は来年1月28日まで。