リニューアルした府茶業研究所のオープンラボ。
木材を施した内装の室内に最新の分析機器が置かれている
京都府茶業研究所(宇治市白川)のリニューアル工事が完了し、記念式典が17日に現地であった。新しくなった本館と製茶研究棟は府内産木材を使った木造平屋で、企業や大学と連携するオープンラボや新型の製茶機を備え、宇治茶の世界進出を後押しする拠点を目指す。
新本館は床面積951平方メートル。内装も木材が多く使われ、屋根など一部には強度や断熱性に優れる直交集成材(CLT)を採用した。オープンラボでは、産官学で宇治茶を使った食品や飲料など新商品の開発を進め、最新の分析機器で宇治茶の機能性成分を解析し、科学的根拠に基づく魅力や価値の発信を図る。
製茶研究棟(624平方メートル)には抹茶の原料となる碾(てん)茶の新型乾燥機を設置した。重油を燃やす従来手法でなく、遠赤外線ヒーターを熱源にして製茶コストを削減する。本館と製茶研究棟の建設費は計約10億円。式典で山田啓二府知事は「宇治茶はイノベーション(技術革新)を重ねて今の地位を築いてきた。最も健康でおいしい飲料であり、世界に打って出なくてはならない」と述べた。
研究所は1925年に開所し、50年には研究者が茶のうまみ成分「テアニン」を発見した。69年に現在地へ移転し、建物の老朽化もあり改修した。
記念の公開シンポジウムが宇治茶会館(同市宇治)であり、宇治茶を使用した菓子で知られる洋菓子店「マールブランシュ」を運営するロマンライフ(京都市山科区)の河内誠社長が講演。「どうすれば魅力を感じてもらい、手にとってもらえるか研究している」と述べ、素材と技術に加え、包装や接客、店舗デザインなどを含むブランディングやマーケティングの重要性を語った。