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亡き愛猫に感謝、住職の心安らぐ

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ネコ介の写真を手に、在りし日の思い出を語る西川さん



 家族と同然のペットを失うと、誰でも悲しい。それは仏門で修行を重ねた宗教者であっても変わらない。妙心寺(京都市右京区)の塔頭で、「沙羅の花」の庭で知られる東林院の和尚さんもその一人。23年間かわいがった猫を亡くしてから、この冬で5年がたとうとしている。

 寺の境内にある墓地の一角に、真新しい墓標がたたずむ。住職の西川玄房さん(78)は、以前に飼っていたオス猫の「ネコ介」が眠るこの墓を毎日訪れている。「禅坊主は本来なら、修行の妨げになるので、物事の執着につながることはしないですが。動物を飼うのはもちろんのこと…」。そう言って苦笑いしつつ、墓石を何度もなでるしぐさに、生前に注いだ愛情の深さが垣間見える。

 ネコ介との出会いは、子猫の時に西川さんの息子が拾ってきたのがきっかけ。当初は寺で飼うべきか迷ったが、再び捨てるのも忍びないと自坊で世話をするようになった。そんな飼い主の情を察してか、ネコ介はとりわけ西川さんによく懐いた。

 日課の散歩では、境内を1周する主人の後ろをまるで飼い犬のようにくっついてきた。朝のお勤めで本山に出かける時は、自坊の門前まで見送ってくれ、戻ってくるまでその場でお留守番。夜は西川さんの胸の上で寝るのがお気に入りだった。「若い頃は元気で、土塀の屋根を駆けずり回ったり、よその寺でいたずらしてたりしていた」

 でも、命あるものは必ずいつかはその生を終える。最後の夜も、いつものように胸の上でくつろいでいたが、朝起きるとこたつの中で息絶えていた。老衰だった。亡きがらは荼毘(だび)に付し、人間と同じように四十九日まで仏前で供養。その後、境内に墓をつくった。

 西川さんは、ネコ介が元気だった頃の3枚の写真をパネルにして、今も大事に自分の部屋に飾っている。その日の天気や自らの体調のこと、仕事で忙しかったことなど、何でも気兼ねなく話しかけている。家族にもこぼせないような、小さな愚痴も。

 「生老病死や諸行無常というものを、目の前で見させてもらった。亡くなっても、自分の先祖と同じような気持ちで、感謝を込めてお付き合いしていく。それが、自分の心の安らぎにもなるんです」


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