(台北 30日 中央社)台湾の鉄道ファンの聖地とされる彰化県社頭郷の飲食店の入口に、店主の陳朝強さんが自費で2年余りをかけて修復した台湾製糖の巡回車135号機が置かれている。店主の情熱に感動した日本人男性は今月中旬、同店を訪問。車両の模型をプレゼントし、陳さんを喜ばせた。
135号機は、台湾製糖渓湖工場の最後の巡回車。1969年6月製造の三菱製で、同7月に運転を開始した。長さ465センチ、幅188センチ、高さ232センチ、重さ3トンで、最大約600キロの荷物を運搬できる。高官や幹部が視察、巡視する際に使われた。
陳さんによると、この車両との出会いは2年前。資源リサイクル会社の社長に列車の購入を持ちかけられた。実際に見に行ったところ、車体はボロボロだったものの、手に入れたいと感じ、4万台湾元(約15万円)で購入。その後、資料を調べてみると、高官用に使われていた車両だと分かったという。
陳さんは車両の修復を専門家に依頼。762日間、約50万元(約186万円)を費やし、昨年の夏に試運転に成功。フェイスブックを通じて、日台の鉄道ファンにこの知らせを伝えた。
135号機の模型を贈ったのは、新潟県で美軌模型店を営む杉本誠司さん。6年前に陳さんの福井食堂を訪れた際、営業時間の合間に名所を案内してもらうなど温かいもてなしを受け、その後はフェイスブックで陳さんと交流を深めていた。今回久々に訪れることになり、当時のもてなしのお礼として模型を製作したという。
模型は通常のNゲージ(縮尺150分の1)より小さく、レール幅は約5ミリの特殊規格。小型のバッテリーを動力に走らせる。既製品の部品を使えない部分が多かったため、完成までには約1週間を費やした。
杉本さんは今月18日夜、同店を訪問。スーツケースから取り出した箱の蓋を開け、模型を陳さんにプレゼントすると、店内は感動に包まれた。
杉本さんは中央社の取材に対し、「日本と台湾の鉄道には共通の歴史があり、様式が似ている部分も多いため、お互いに興味を持てる要素がとても多い」とし、「多くの人に、隣国にも面白い世界が広がっていることを知ってもらいたい」と語った。
陳さんによれば、今年7月に同車両が製造から50年を迎えるのに合わせ、誕生パーティーの開催を計画しているという。