ほのかな灯明のもと、和歌を詠み上げた「乞巧奠」
旧暦の七夕にあたる9日、歌道宗家冷泉家に伝わる祭事「乞巧奠(きっこうてん)」が京都市上京区の冷泉家住宅で営まれ、門人ら約140人が王朝文化の風情に浸った。
乞巧奠は、牽(けん)牛と織女に雅楽や和歌などを手向け、技芸上達を祈る星祭り。人々は戸やふすまを開け放った座敷に集い、琴や琵琶、種々の食物を供えた庭の祭壇「星の座」を眺めた。
日が沈み始めると、狩衣(かりぎぬ)や袿袴(けいこ)姿の男女が、かすかな風に揺れる灯台の火を囲み、今年の兼題「七夕鳥(しっせきのとり)」に寄せられた歌「二星(たなばた)に夜明けを告くるかけの声別れの袖は露にぬれつつ」(冷泉為人当主)など9首を独特の抑揚で優雅に詠み上げた。