京都に開設する技術開発拠点について説明するLINEの池邉上席執行役員
無料通信アプリを手掛けるLINEが、今春をめどに技術開発拠点を京都市に開設する。国内で開発部門を置くのは、東京の本社と福岡市の子会社に次いで3カ所目だ。著しい成長で注目を集めるIT企業は、なぜ京都に目をつけたのか。どんなテーマに取り組むのか。同社幹部にインタビューし、その狙いを探った。
LINEが新たに拠点を構えるのは、下京区の四条通に面したビルだ。当初は10人ほどでスタートし、1年後には40人程度に拡大。将来的には100人規模を目指すという。その多くはソフトウエアのエンジニア。サーバーやアプリ、人工知能(AI)、セキュリティーなど、多様な分野の技術者をそろえる計画だ。
それだけの人材を関西で集めるのであれば、京都よりも人口がはるかに多い大阪が有利にも思えるが、同社のサービス開発を担当する池邉智洋上席執行役員は「京都は海外での知名度が高く、外国人を引きつけやすい」と利点を挙げる。
同じく開発部門がある福岡市の子会社では、エンジニアの半数程度を外国籍の社員が占めるという。池邉上席執行役員は「外国人にしてみれば、日本に住むのならばユニークな街の方がいい。京都には伝統文化や社寺がある。外国人に慣れているので奇異な目で見られず、暮らしやすい。スタッフの募集をかけると、海外からかなりの応募があった」と手応えを語る。
新卒採用でも、大学が多い京都に拠点を置く地の利が生かせると考える。同社は現在、月1回程度のペースでエンジニアを対象にしたイベントを京都で開いており、学生の参加者が3~4割に上るという。「学生のうちからインターンシップで当社に来てもらい、ソフトウエアのエンジニアの道に進む人を増やしたい」(池邉上席執行役員)と期待する。
■AIスピーカー進化の場に
京都の拠点ではまず、同社のAI技術「Clova(クローバ)」を搭載したスピーカーの新機能を開発する。AIスピーカーは、利用者の声を認識し、音楽やラジオ、ニュースなどのさまざまなサービスを提供する機器で、グーグルやアップル、アマゾンなどの米IT大手との競争が激化している。他社にないサービスを生み出し、シェア拡大を目指す戦略だ。
入居するビルは地下にイベント用スペースも備える。社外の人材も参加する勉強会などを開き、人脈づくりや連携先の開拓にもつなげる。池邉上席執行役員は「京都にはスタートアップ(創業まもないベンチャー企業)も多い。当社のプラットフォーム(基盤)を利用する企業を増やしたい」と話し、京都におけるIT分野のコミュニティーづくりにも意欲を示した。