鞠を作る池田さん(京丹波町上野)
平安時代に貴族の間で親しまれた蹴鞠(けまり)の鞠作りに、京都府京丹波町上野の男性が取り組んでいる。明治時代に発足した蹴鞠(しゅうきく)保存会(京都市)の元会員で、昨年10月に京都市から移住し、「蹴鞠を生涯スポーツとして広め、将来は京丹波で大会を催したい」と意気込む。
京都市西京区出身の池田幸雄さん(66)で、同保存会に25歳で入会。全国の神社で蹴鞠が奉納されるなど伝統が継承される一方で、蹴鞠の鞠を製作する人材が少ない現状を懸念するようになった。
鞠はシカの皮を材料に作る。丹波地域でシカを狩る猟師を知り、皮を提供してもらう約束を取り付けたのを機に鞠の作り手になろうと決心。「シカ猟をする人が多い」と、町内の古民家と土地を購入し、工房を設けた。
鞠の作り方は古来より秘伝とされ、正式な作り方を知る人は少ない。池田さんは、古文書に残る簡単な記載などを参考に皮の処理法を研究してきた。乾燥させ、ぬかや塩などでもんで柔らかくした上で、40センチ四方に丸く切り取った皮を二つ作って縫い合わせ、数個を完成させた。
池田さんは「江戸時代の鞠は蹴るとスーッと空に上がり、非常に柔らかく軽い。そのレベルまで品質を高めたい」と意欲を燃やす。今春には「けまり鞠遊(きくゆう)会」を立ち上げ、普及にも取り組むという。自宅の敷地に練習用の庭も整備し、「蹴鞠の楽しさを多くの人に伝えたい」と話す。