五代目中村雀右衛門
11月30日に開幕する今年の「吉例顔見世興行」は、女形の大名跡・五代目中村雀右衛門の襲名披露公演。会場変更に伴い、例年より出演俳優は絞り気味ながら、坂田藤十郎、片岡仁左衛門の両人間国宝らが顔をそろえ、年の瀬を盛り上げる。
雀右衛門の襲名披露は3月に東京から始まり、顔見世が締めくくりとなる。雀右衛門は3本の披露狂言をいずれも初役で務める。
第1部の舞踊「道行旅路の嫁入」では娘小浪役。忠臣蔵の八段目に当たる挿話で、許嫁(いいなずけ)・力弥の元へと急ぐ旅路を踊り紡ぐ。藤十郎が母戸無瀬で花を添える。第2部は男女の機微をはんなり描く上方和事の代表作「廓文章(くるわぶんしょう) 吉田屋」で、父の四代目が数多く演じた遊女夕霧を務め、仁左衛門が伊左衛門で付き合う。第3部では、歌舞伎舞踊の頂点「京鹿子娘道成寺」で、父の当たり役の白拍子花子。“押し戻し”で市川海老蔵が出演する。
この日の会見で、雀右衛門は「お客様との距離感が近い歌舞練場で、襲名披露ができることに、今からわくわくしている。精いっぱい務めたい」と述べた。
片岡愛之助が「実盛物語」(第1部)で、風姿さわやかな武将実盛を初役で務めるほか、中村鴈治郎、愛之助、片岡孝太郎の上方勢が「車引」(第2部)でそろい踏み。海老蔵の新作舞踊「三升曲輪傘売(みますくるわのかさうり)」(同)も。仁左衛門は京都・八幡を舞台に、家族の情愛を描く名作「引窓」(第3部)で十次兵衛を演じる。
12月25日まで。チケットは前半分(12月12日まで)が11月15日、後半分が11月29日発売。7500~1万6500円。チケットホン松竹TEL0570(000)489。
■演目と配役
【第1部=午前11時開演】(1)「実盛物語」斎藤別当実盛(片岡愛之助)、瀬尾十郎兼氏(中村亀鶴)、葵御前(上村吉弥)、小万(大谷友右衛門)(2)「道行旅路の嫁入」戸無瀬(坂田藤十郎)、奴可内(中村鴈治郎)、小浪(中村雀右衛門)
【第2部=午後2時開演】(1)「車引」梅王丸(鴈治郎)、松王丸(愛之助)、桜丸(片岡孝太郎)(2)「廓文章 吉田屋」藤屋伊左衛門(片岡仁左衛門)、扇屋夕霧(雀右衛門)、吉田屋喜左衛門(坂東弥十郎)、女房おきさ(片岡秀太郎)(3)「三升曲輪傘売」傘売り三すじの綱吉実は石川五右衛門(市川海老蔵)
【第3部=午後5時45分開演】(1)「引窓」南方十次兵衛(仁左衛門)、女房お早(孝太郎)、母お幸(吉弥)、濡髪長五郎(弥十郎)(2)「京鹿子娘道成寺」白拍子花子(雀右衛門)、大館左馬五郎(海老蔵)