春の競技シーズンを前に、出荷を待つ競技用ボート(大津市山百合の丘・桑野造船)
日本で唯一競技用ボートを製造する「桑野造船」(大津市山百合の丘)で、春の競技シーズン入りを前に、生産作業が本格化している。今年は1868(明治元)年の創業から150年。「世界に通じる船を造っていきたい」と意気込む。
同社は漁船や農業用の船の製造から始まり、明治初期から競技用ボートも手掛けた。現在は1人乗り、2人乗りを中心に、大学や高校、社会人チームなど向けに年間約100艇を出荷している。
シーズンが終わる秋ごろから選手らの相談を受け、春に間に合うようこの時期に生産が本格化する。船型に3層の素材を密着させて船体を造る「積層」、内部に甲板などを接着させる「組み立て」、チームカラーに合わせた「塗装」など8工程があり、2週間から1カ月をかけ1艇を完成させる。社員16人のうち、10人は競技経験者。選手が使いやすい船を造るため、全て手作業で細かい調整を行う。
日本の競技人口は約1万人といい、近年は裾野を広げるために初心者向けの船にも力を入れる。高校からボートを始め、指導歴も豊富な小沢哲史社長(60)は「世界のトップレベルと遜色ない船を造っている。安全な船を造ることで、競技に貢献していきたい」と話す。