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アカデミー賞辻さん、才能の片りん 京都の高校時代

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辻さんが高校時代に作ったオブジェ。木製とは思えない仕上がり 


アカデミー賞のメーキャップ&ヘアスタイリング賞を受賞した辻一弘さん(48)の原点は、京都の高校時代にあった。当時からのぞかせていた才能の片りんを恩師たちが語った。

 「手先が器用で、よく驚かされました」。辻さんの母校、龍谷大平安高(下京区)で高校3年間の担任を務めた三條場裕之教諭(61)は5日、受賞を聞いて振り返った。「リンカーンの写真を見せられ、『これ僕です』って言うからびっくりしたこともありました」

 辻さんの大きな転機は高校3年の時、河原町の書店「丸善」で見つけた洋書雑誌で米国の特殊メーク界の巨匠ディック・スミスの存在を知ったことだった。「英語で手紙を書いてほしい」。辻さんは英語教師だった三條場さんに頼んだ。

 我流で制作した特殊メーク写真を同封すると間もなく返事が来た。「17歳とは思えない作品という感想と、卒業後の渡米を歓迎する旨を翻訳すると喜んでいました」。東京の特殊メーク専門学校を紹介してくれたのもスミス氏だったという。

 「彼の名前は忘れない」。美術を教えた宮永良二郎教諭(63)はそう話す。

 美術室の壁には今も辻さんが3年の時に授業で作った作品が掲げられていた。段ボールに張り付いた昆虫に見えるが、実は1枚の板を彫ったオブジェ。「ほとんどの生徒は皿を作ったが、彼だけは視点も技術も違った」。宮永さんは他にも辻さんの作品を保管していた。レコードジャケット制作では変身したオオカミ男の絵を描き、特殊メークへの関心をうかがわせる。「美術大を薦めたが、決めた道があると言っていた」

 卒業アルバムにメッセージを書く欄で、辻さんは「ALL THE BEST」(ごきげんよう)と英語で記していた。


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