千手観音立像(京都市東山区・三十三間堂)
文化審議会(馬渕明子会長)は9日、三十三間堂(京都市東山区)の1001体に及ぶ木造千手観音立像と、滋賀県長浜市西浅井町菅浦に伝わる鎌倉時代から江戸時代にかけての古文書「菅浦文書」を重要文化財から国宝に格上げするよう、林芳正文部科学相に答申した。
千手観音立像は、平安時代後期の創建時(1164年)の124体と、鎌倉時代の焼失後の再興で慶派や円派といった仏師集団が手掛けた観音像などからなる大群像。
1973年度に始まった全観音像の保存修理は、重文の彫刻1件の修理として過去最長を記録。45年間に及ぶ作業が昨年末に終了したのを機に、王朝文化の華やかさと壮大な規模を伝える記念碑的な作例として、国宝にするよう求めた。
三十三間堂の本坊妙法院の杉谷義純門主(75)は「今回の指定で堂内の仏像全てが国宝となり、次世代に伝える責任の重さをあらためて感じる」と話し、記念誌の発行など情報発信に力を入れるという。
菅浦文書は、「惣(そう)」と呼ばれる中世の村人による自治組織が書き残した集落の共有文書群。集落運営の規則を定めた村掟(おきて)や、田地をめぐる隣村との争いを村人が記録した「合戦記」などが含まれ、中世村落の様相を伝える古文書としては、800以上の研究論文などで引用されるなど、全国でも群を抜いて著名な史料となっている。