「壱週刊」4月4日発行号
(台北 5日 中央社)台湾の週刊誌「壱週刊」は4月4日発行号を最後に、紙媒体での発行を終了した。今後は全面的にウェブ版に移行する。専門家は、メディア業界の経営難や同社の商業主義体質などが背景にあると分析している。
同誌は香港で同名雑誌を手掛けるネクストメディア(壹伝媒)グループによって2001年5月31日に創刊。17年間にわたり、政財界や芸能界の著名人の私生活や問題などに迫り、社会の闇を暴き出してきた。卓越新聞奨基金会の邱家宜理事長は、同誌がもたらしたメディア文化は台湾メディアに「徹底的な市場化」という衝撃を与えたと指摘する。
かつての台湾メディアは政財界の大物のプライベートを扱うことはなかった。だが同誌の台湾上陸以来、大実業家や高官らは芸能人などと同じように私生活をさらされるようになった。
また、同誌が報じた事件が必要以上に大きく見なされ、他社がこぞって後追いするという風潮も生まれた。邱氏は「これによって台湾のメディア環境の貧しさが明るみに出た」と言及。特に商業放送局やインターネットメディアは視聴率やPV数を追求するため、やみくもに同誌のトップニュースを追いかけるようになったという。
中正大コミュニケーション学科の胡元輝教授は、同社の典型的な商業主義は市場のニーズにしっかりと対応できていなかった台湾の伝統的メディアの弱点を突いた一方で、扇情報道という競争戦略を激化させたと指摘する。さらに、今回の発行終了はメディア業界の経営環境の変化や既存の収益モデルでは運営を支えるのが難しいという苦境、同社の商業メディアとしての特質を反映しているとの見方を示した。
同社台湾支社の邱銘輝社長は中央社の取材に対し、広告収入の大幅な減少をウェブ版移行の理由に挙げる。紙媒体を襲う経営危機に関して「壱週刊も例外ではない」と告白し、ウェブ版ではより良質で詳しい記事を提供していきたいと意気込みを示した。