軽装や浴衣姿で稲荷山を歩く参拝者たち
伏見稲荷大社(京都市伏見区)の東側に広がる稲荷山で、山岳事故が増加している。同大社への観光客がハイヒールやサンダルなどの軽装で入山し、体調不良や転んで負傷するケースが続出しているためだ。市消防局は服装や体調への配慮など、参拝時の注意を呼び掛けている。
稲荷山は東山連峰の南端に位置し、伏見稲荷大社の神体山。標高は233メートルで、本殿から鳥居が連なる山道や山頂を巡るコースは約2時間で1周できる。2014年と15年に同大社が旅行口コミサイトで外国人に人気の観光地1位に選ばれ、観光客が急増している。
8月上旬の平日昼すぎに同大社を訪れると、Tシャツやサンダル姿の観光客でにぎわっていた。本殿から千本鳥居を抜け、奥社に着くと、人の流れに任せてそのまま入山する観光客の姿が目立つ。奥社からは、緩やかな上り坂が徐々に急な階段へと変わった。
浴衣姿の会社員持田由希さん(23)=神奈川県=は「こんなに山道が長いとは。案内板をよく見ていなかった」と疲れ果てた表情。ワンピースやビーチサンダルを身につけた外国人、スーツケースを持ったままの観光客が、途中で引き返す姿も多く見受けられた。
市消防局によると、稲荷山の山岳救助は15年に28件と、前年比で2倍以上に増加。同年の愛宕山19件、北山11件と比べても突出している。今年は7月末までですでに19件の救助が発生しており、うち5件は外国人だった。
同大社は拝観料を取っていないため、稲荷山にも24時間立ち入れる。夜間の事故のほか、舗装されていないぬかるみや雨天時の石段での転倒、休日に人混みの山道を歩き続け、熱中症を発症したケースもあった。
市消防局は紅葉シーズンに向け「自分の体調や服装、天候を考慮し、体力にあった範囲での登山を心がけてほしい」と呼び掛けている。