京都市は、施設の命名権を企業に売却する「ネーミングライツ」について、対象となる施設を一定制限する方針を決めた。市美術館(左京区)の命名権売却に市議会で異論が噴出し、制度への懸念が増しているのを踏まえ、要綱の変更が必要と判断した。
市は2008年10月に「市ネーミングライツ事業実施要綱」をつくり、制度を導入。これまでに西京極野球場(わかさスタジアム京都・右京区)や京都会館(ロームシアター京都・左京区)など9施設で導入しているが、命名権売却の対象となる施設は明確に示されていない。
全国的にはスポーツ施設で命名権売却が相次ぐが、公的な美術館や博物館ではほとんど例がない。
財政事情が厳しい市は、総額約100億円をかけて改修する市美術館への適用を決定した。最長50年間で50億円を目安に今月末まで企業を募集しているが、市議会で「企業名が美術館に付くことには市民に抵抗感がある」(自民党市議)「美術館の歴史への冒瀆(ぼうとく)ではないのか」(共産党市議)との反対意見は根強い。
命名権売却には現在、市議会の議決は必要なく「このままだと、市が財政難を理由に二条城や市役所庁舎の名称も売りかねない」(自民市議)との懸念も広がっている。市も「現状の要綱では、どこまでが対象か十分明示できていない」(資産活用推進室)と認め、早期に要綱を改定して、対象施設の制限や売却先を決める選定基準を設ける方針を固めた。
市は要綱を改める意向を示す一方、市美術館については「再整備の財源を確保する責任がある」(市幹部)として命名権売却の方針は変えていない。